飛翔

日々の随想です

詩歌に寄せるエッセイ

猿も手を組む秋の風

季節や気温と云うものは 人間の行動や感情に微妙な風情を喚起するもののようだ。 だんだん涼しくなって秋も深まる頃になると、もの思いにふけったりする。 思索にふけるとき、懐手(ふところで)をしたり、無意識に手を組んだりするものだ。 そんな様子を元…

蚊を疵(きず)にして五百両

俳人の宝井其角はこんな句を詠んでいる:夏の月 蚊を疵(きず)にして五百両 これは宋の詩人(そとうば)の漢詩「春夜」から思い立った俳句である。 先ずは(そとうば)の漢詩「春夜」を詠んでみよう。 「春夜」 春宵一刻直千金 (しゅんしょういっこく あた…

うすべに色の迷い

女が女であると意識する時は薄物をはおるときではなかろうか。 肌がすけてみえる瞬間、えもいわれぬ美がかもしだされる。そしてそれを脱ぐときはさらになまめく。 そんな女のナルシズムを歌ったのは松平盟子である。 ・ランジェリーすべりおちゆくたまゆらの…

菫ほどな 小さき人に生まれたし

菫(スミレ)が咲く季節になった。 スミレで思い出すのがあの漱石の句。 ・菫ほどな 小さき人に生まれたし(明治30年)漱石 小さな存在だけれど懸命に咲くスミレほど愛らしいものはない。 漱石はあれほど才能があったけれど、小説家としてスタートしたのは3…

「猿も手を組む秋の風」

季節や気温と云うものは人間の行動や感情に微妙な風情を喚起するもののようだ。 だんだん涼しくなって秋も深まる頃になると、もの思いにふけったりする。 思索にふけるとき、懐手(ふところで)をしたり、無意識に手を組んだりするものだ。 そんな様子を元禄…

新美南吉生誕100年

今年は児童文学作家 新美南吉生誕100年を迎える。 新美南吉が有名になったのはそんなに昔のことではない。 しかし今では小学校の4年生頃の国語教科書に登場する「ごんぎつね」が有名になり、全国の小学生の胸に感動を刻むようになった。 そして上皇后の愛…

萌え出づるも枯るるも同じ野辺の草

いつも京都へ出かけるときは必ず行く場所は『祇王寺』。 京都でも最も美しくわびしいまでに静寂な場所『祇王寺』 何度きても美しく心が落ち着いて日本の美を感じる場所。 こけむした庭。 紅葉のこだちごしに見える庵の詫びた風情は絶景。このこけに秋になる…

移りゆく風物

・すゞしさや月ひるがへすぬり団扇(うちわ) 祐甫 この句は元禄時代のもの。「ぬり団扇(うちわ)」というのがミソ。 月の光が漆(うるし)が塗られた団扇(うちわ)の表面に射しかかるようすはなんとも風流で涼しげです。しかも、うちわをあおぐたびに月の…

七夕の季語は秋?!

もうすぐ七夕。 こんな句がある。 七夕や髪濡れしまま人に逢ふ (橋本多佳子『橋本多佳子句集』(角川文庫)より) これは女流俳人の橋本多佳子の作。 洗い髪が乾かぬまま恋しい人のところへ行くという逢瀬のひと時を歌ったものかと思ったらそうではないらし…

不倫のほてりを抑える場所は?

台所からほの暗い恋の川柳をうたった主婦がいた。 俳句と言うほぼ同じ詩形をもつ川柳だからこそ一首が輝いた不倫の歌。 『有恋夫』を書いた時実新子。 俳句だと品格が落ちてしまいがちな句を、川柳にすると、生き生きとしたものになる不思議。 ・熱の舌しび…

『枇杷(びわ)の花の祭』

新美南吉の詩に『枇杷(びわ)の花の祭』というのがある。 それを紹介しよう 枇杷(びわ)の花の祭 枇杷の花に、枇杷の花に、 祭があるよ。 ひだまりに、ひだまりに、 何かなるよ。 のぞいたら、のぞいたら、 小さい祭よ。 蜜ばちが、蜜ばちが、 祭してるよ…

寝顔が汚れるって?

起床時間になって夫をおこそうとして顔を見た。 寝顔があまりにも子どものようだったのでしばらくながめていた。 布団からでた手がバンザイをしているようだった。 仕事がきつくて「もう僕お手上げです」とでも言っているのだろうか? それともなにか良い夢…

蚊友

蒸し暑くなってきたとたんに、蚊がでてきた。 蚊という生き物はどうみても愛おしいとは思えない。 しかし、「蚊」は文学する生き物なのだ。 なぜならやたらに文、文、文とやかましいからである。 それに蚊と云う字は虫偏に文と書く。 かの漱石は ・叩かれて …

短歌と「女性性」と人間尊重

富小路禎子(とみのこうじよしこ)の歌にはじめて出逢った時は少なからずショックを受けた事を覚えている。 その歌とは 処女(おとめ)にて身に深く持つ浄き卵(らん)秋の日吾の心熱くす 与謝野晶子は女性の肉体を歌って賛否両論、多いに世を騒がせた。 や…

大地の祭り始まらんとす

やっと待ちに待った春がやってくるのを 木々の芽吹きや、春の花々をみて感じる。 春の花をながめていると体から力がわいてくる。それは大地から草花の芽が萌え出て木々にも芽吹きを迎え、 エネルギーがそこかしこにみなぎって瑞々しい命の声を聞くようである…

童話作家 新美南吉生誕100年を祝って

今年は児童文学作家 新美南吉生誕100年を迎える。 新美南吉が有名になったのはそんなに昔のことではない。 しかし今では小学校の4年生頃の国語教科書に登場する「ごんぎつね」が有名になり、全国の小学生の胸に感動を刻むようになった。 そして皇后陛下の…

仕合わせ

昨日の冷たい雨とはうって変わって、今日はぽかぽかと暖かい晴天。 家中の布団を庭に干した。太陽が燦燦とした中、家中の布団が干してある光景は壮観であり、主婦として満ち足りた瞬間でもある。 そう。「幸せ」というのは何もぎょうぎょうしいものでなく、…

心を温める詩と幼児期の束縛

こんな詩があなたを抱きしめてくれることを願って:見知らぬ子へ 辻征夫 何だかとてもおこりながら すたすた歩いて行くおかあさんのうしろから 中学に入ったばかりかな? 女の子が 重い鞄をぶらさげて 泣きながらついて行く ときどき振り向いて いいかげんに…

12月のうた

それにしても勉強が足りない。 足りないことだらけだ。 人生の時間を随分無駄遣いしてきたようなきがする。 気がつけばもう12月が終わろうとしている。 一年のしめくくりの12月。「十二月のうた」を声高らかに朗読しようと思う。おんなのことば (童話屋の詩…

仕合わせ

昨日の冷たい雨とはうって変わって、今日はぽかぽかと暖かい晴天。 家中の布団を庭に干した。太陽が燦燦とした中、家中の布団が干してある光景は壮観であり、主婦として満ち足りた瞬間でもある。 そう。「幸せ」というのは何もぎょうぎょうしいものでなく、…

メン類

冷え込む夜には麺類が恋しくなる。 メン類(シクラメン) うどんが好き そばがすき ラーメンがすきメン類は みんなすきそんなわけで シクラメンもすき と言ったのは詩人で、画家の星野富弘だ。 1970年に高崎市立倉賀野中学校に体育教師として着任したが、2ヵ月…

すべてはかけがえのない存在

まど・みちおさんのこんな詩を読んでみた。ぼくが ここにぼくが ここに いるとき ほかの どんなものも ぼくに かさなって ここに いることは できないもしも ゾウが ここに いるならば そのゾウだけ マメが いるならば その一つぶの マメだけ しか ここに い…

あのねママ

ママ 田中大輔あのねママ ボクどうして生まれてきたのかしってる? ボクね ママにあいたくて うまれてきたんだよ (『あなたにあいたくて生まれてきた詩』宗左近 新潮社より) ※この作品『ママ』は三歳の大輔くんが話しかけてきた言葉を、母親が書きとめたも…

七夕は「秋」の季語

明日は七夕。 こんな句がある。 七夕や髪濡れしまま人に逢ふ (橋本多佳子『橋本多佳子句集』(角川文庫)より) これは女流俳人の橋本多佳子の作。 洗い髪が乾かぬまま恋しい人のところへ行くという逢瀬のひと時を歌ったものかと思ったらそうではないらしい…

夕すゞみ星の名をとふ童(わらわ)かな

今日は名古屋地方の最高気温は31.6℃だった。 夜になって少し涼しくなった。こんな暑い夏の宵は浴衣を着て夕涼みがてらそぞろ歩きなどしてみたい。 星を眺めるときがあっただろうか?節電が叫ばれているが、不夜城のように夜でも煌々(こうこう)と明かり…

傘と恋の濃度

少し前、このブログ主催で「しりとり575」というのをやりました。 その中にとても瑞々しい句が目をひきました。 初々しい恥じらいを傘に託した、すがすがしい句。 その句は:・夏の雨 濡れて揺られて 傘ふたつ 鎌倉・明月院をゆく二人を登場させました。 …

「働くお母さん」を読む

五月の第二日曜日は「母の日」だ。 企業内に保育設備を設ける会社がふえた。そして「子育て支援」という言葉も日常のものとなりつつある。しかし、現実はまだまだ働く母の味方となる社会ではなさそうだ。 元新聞記者で歌人の松村由利子さんも働くシングルマ…

「須可捨焉乎」は何とよむでしょうか?

子供の頃「はやし言葉」っていうものがありましたが、みなさんは知っていますか? 私の子供の頃は「♪泣き虫毛虫はさんですてろ」というのがありました。 これは遊んでいて急に泣き出した子にまわりの子供たちが「わ〜い、泣き虫毛虫、はさんで捨てろ」とはや…

五月のいろはこむらさき

藤の花が綺麗な時期になりました。 堀口大學の詩集を久しぶりに読んでみた。 その中から今の季節にふさわしい詩を紹介しよう。 五月 五月のいろはこむらさき されば藤さきあやめさき 桐の花さへさきぬめり 世を偽りのこむらさき (堀口大學詩集より「五月」…

「須可捨焉乎」は何とよむでしょうか?

子供の頃「はやし言葉」っていうものがありましたが、みなさんは知っていますか? 私の子供の頃は「♪泣き虫毛虫はさんですてろ」というのがありました。 これは遊んでいて急に泣き出した子にまわりの子供たちが「わ〜い、泣き虫毛虫、はさんで捨てろ」とはや…