飛翔

日々の随想です

2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

桜月夜と帯とたすき

先日美容院で婦人雑誌を読んでいたら俳人の黛まどかさんご家族が載っていた。 お父様も俳人だそうだ。 黛さんはお年頃になって婚約寸前の人を家に連れてきたとき、月がでていたのをみて「あら、月だわ」というと彼は「そうだね」と言っただけだったとか。 横…

熟読玩味しても読みきれない書物

昨日は強風が吹き荒れて寒い一日だった。 夕食のとき、夫が「寒いね」と言うので「寒いわね」と答えると、顔を覗き込んでまた「今日は飛び切り寒いね」と含みのある顔をする。「はは〜ん」と思ったが、「ストーブがついているからすぐ温まるわよ」と言うと「…

さまざまのこと思ひ出す桜かな

花は散ってしまうと無残になるものがある。 花の女王薔薇でさえもガクの部分にしがみつくように花びらの一片が残っていたりする姿はいたましい。 それにひきかえ桜はどうだろう。 ぱっと咲いたかとおもうと惜しむ暇もなくぱっと散ってしまう。 散った花びら…

桜の時期にぴったりの古本のレア本

桜の時期にぴったりの本を紹介しましょう。 『支那童話集』佐藤春夫著 日本児童文庫.(アルス)。 古本のレア本です。 装丁・恩地孝四郎 口絵挿絵・島田訥朗 ※「賜天覧、台覧」と最初の頁に印刷されていて、天皇陛下や皇后陛下にご覧頂きましたという事で非…

森田りえ子展を観て

今日は朝から良く晴れたが、ひどく寒い土曜日であった。 午後から京都画壇において最も注目を集めている女流画家「森田りえ子」の「東方彩夢 森田りえ子展」を観に行った。森田りえ子は昨年の春、パリにて開催した展覧会で人気を博した画家である。また世界…

忙中読書

今日も冷たい雨が降った一日だった。 この寒さで桜も咲き控えぎみだろうか?卒業式の時期で着物姿の人には気の毒な雨だ。 読書がなかなかはかどらない。四月に入ってすぐに翻訳家の柴田元幸氏におめにかかるので、できるだけ多くの作品を読んでおきたいと思…

和歌が主役の能

能「忠度」(ただのり)は世阿弥の作とされるもので、武将であると同時に歌人でもあった忠度(ただのり)の『千載集』(せんざいしゅう)についての執心と忠度(ただのり)最期(さいご)の有様を語る能である。 これは修羅物とよばれるものであるけれど、修…

オイゲン・キケロのソルフェジオ・ハ短調

WIZARD OF OZONE?小曽根真ベスト・セレクションアーティスト: 小曽根真,北川潔,ジェームス・ジーナス,ジョン・パティトゥッチ,クラレンス・ペン,ピーター・アースキン,ジョン・スコフィールド,ウォレス・ルーニー出版社/メーカー: ユニバーサル インターナシ…

野鳥と共に (野鳥記コレクション)

野鳥と共に (野鳥記コレクション)作者: 中西悟堂出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2004/05メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見るすずめの鳴き声でその喜怒哀楽を知ることが出来るってご存じでしたか?またウグイスの鳴き声は3種…

カレーの浜辺の夕暮れ

ワーズワースの詩「カレーの浜辺の夕暮れ」を読んでいるうちに、カレーの浜辺の思い出が蘇ってきた。 ドーバーの白い崖。そこからはるか彼方を眺めるとそこはフランス。カレーの浜辺に行き着く。 英国を去る日も真近な頃、私も含めて3人の友がやがて来る別…

一箱古本市

今日は上着を脱ぎたくなるほどあたたかな陽気の土曜日だった。 今日は名古屋市内の四十九書店などが参加する「ブックマークナゴヤ2010」が開幕する日。本にまつわる五十を越える行事が四月十八日まで各所で繰り広げられる。その一つの「一箱古本市」が名古屋…

86歳舌がん乗り越えコンサート

昨年1月、舌がんの手術をした三重県伊賀市上野農人町の声楽家、前川圓(えん)さん(86)が16日、手術後初となるコンサートの舞台に立った。舌の4分の3を切除し「もう音楽は無理」とあきらめていたが、大好きな歌を歌うために勇気を奮い立たせて現役…

王女マメーリア

王女マメーリア (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ロアルド・ダール,Roald Dahl,田口俊樹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1999/01/15メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (9件) を見る亡くなった向田邦子は「一生に一度でいい、ロアルド・ダー…

初お目見え

四月の初旬に柴田元幸氏とお目にかかれることになった。彼の新翻訳による「ナイン・ストーリーズ」を読んでおこう。お聞きしたいことが山のようにある。大好きなカズオ・イシグロのことや、サリンジャーのこと、翻訳のことなど。また五月には先般芥川賞を受…

タタド

タタド作者: 小池昌代出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/07/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (31件) を見る小池昌代は詩人である。この人の作品は『詩と生活』 (思潮社)、『屋上への誘惑』(岩波書店)『小池昌代詩集』(思潮社…

開高最高!

名古屋三越で北海道展が催されている。北海道展はいつでも大変な混み様で人気がある。 海鮮弁当を買い、チーズスフレを買い、縞ホッケを買い、そしてあのチーズを買った。 「あのチーズ」とはあれですよ。ほれ、あれ!って何のことか? 私もずいぶんミーハー…

敬愛するK,Hさんの快復を祈りて

毎日のほほんと無為に過ごしていることの幸せと不幸の背中合わせを感じる。 人は一刻一秒を無駄にできないと感じるときは、迫り来るものの影を感じるときだ。数年前、生死の境をさまよって生還し、退院した日の空の色と風のそよぎを忘れることができない。そ…

向田邦子ふたたび

向田邦子ふたたび (文春文庫)作者: 文芸春秋出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1986/08メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (10件) を見る12時間もの飛行機の中で『向田邦子ふたたび』(文春文庫)を読了した。 向田邦子の突然の死を偲ぶ追…

マンジャーレ、カンターレ、アモーレ

文芸評論家、書誌学者として有名な谷沢永一と作家、開高健という希有な文学のマエストロの間にあって、友人として、同年の者として、自分の道を模索し、苦しんできたのは評論家、書評家の向井敏であった。 ちょうどそんな向井敏と同じように苦しんできたのは…

春宵一刻

二月の末にイタリアに行き、帰ってきたらもう三月になっていて、隣の家にはもう桜が咲いていた。お雛様は終わって納戸の隅で来年を待つ。月日は待ってはくれず立ち止まることもしない。 お能『西行桜』の最後にこういう謡いがある。♪「あら名残惜しの夜遊(…

変ロ長調「遺失」

今日は横殴りの激しい雨が降る小寒い一日だった。 「消えてしまったもの」「消えてしまった言葉」についてぼんやりと思いをめぐらせて時が過ぎて行った。 消えてしまった私の熱情の焔。消えてしまったあの人との恋。消えてしまった私の青春・・・。「好き」…