飛翔

日々の随想です

2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

雪と笠と言葉

北海道はもう雪が降っているとか。 中国の詩人玉屑(ぎょくせつ)の詩の一節に「笠重呉天雪 鞋香楚地花」(笠ハ重シ呉天ノ雪 鞋ハ香シ楚地ノ花)=(かさはおもしごてんのゆき くつはかんばしそちのはな)というのがある。 「呉天」とは「呉国の空」で、「(都か…

「天地有情」

声高らかに朗詠したくなる詩がある。 ここにその一つをあげてみよう。 星と花 同じ「自然」のおん母の 御手にそだちし姉と妹(いも) み空の花を星といひ わが世の星を花といふ。かれとこれとに隔たれど にほひは同じ星と花 笑みと光を宵々に 替(か)はすも…

野呂邦暢『古い革張椅子』

書き出しの一行できまるという。古い革張椅子 (1979年)作者:野呂 邦暢集英社Amazon 野呂邦暢のエッセイは淡々と無駄のない言葉が紡がれていて、飄々とした書き味はモノクロームな映像を見るようだ。 「書出し」という題のエッセイ: 文章には初めと終りがあ…

本の装丁

私のお宝本である『能楽全書』全七巻(東京創元社) 装丁がものすごく凝っている。表紙は能装束からとったもの。 観世宗家に蔵してある長絹文様で、紺地がかった萌黄色(もえぎいろ)。 『能楽全書』の題字は支那の古文から選定されたという懲りよう。 箱は撫…

ミサ曲ロ短調

バッハ: ミサ曲ロ短調アーティスト: ヨハン・ゼバスティアン・バッハ,カルロ・マリア・ジュリーニ,バイエルン放送交響楽団及び合唱団,ヤルト・ヴァン・ネス,デイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン,ルート・ツィーザク,ロバータ・アレクサンダー,キース・ルイ…

お宝古本『火の魚』

二年前古本屋で見つけたお宝本。 それはこれ↓ 室生犀星の絶版本。函つき。美本。函から出すとこれまたすごい! 何と装丁は室生犀星自身!! 装画は山口蓬春 しかも中身。内容の小説がすごい! 栃折久美子(とちおり・くみこ) さんをモデルにした本の題名に…

 黒岩比佐子さんに捧ぐ

玉響(たまゆら)君の心は金の糸 わが心の布に刺繍(さ)したれば 光さやけし秋の日に 錦となりてふりつもる もみじの園生(そのお)竜田川 こがねまばゆい褥(しとね)となりて 一夜(ひとよ)の夢の枕辺(まくらべ)を 美(うま)し御国(みくに)に変えゆ…

追悼 黒岩比佐子さんを偲んで

明治・大正期のジャーナリズムや世相を生き生きと描いたノンフィクション作家の黒岩比佐子(くろいわ・ひさこ)さんが17日午後1時37分、膵臓(すいぞう)がんのため死去した。52歳。告別式は19日午前10時30分、東京都文京区小石川3の7の4真珠…

黒岩比佐子さんが天に召された

「古書の森日記」のサイトをあけてびっくり。 黒岩比佐子さんが 「11月17日13時37分、黒岩比佐子さん永眠されました」 という信じたくない報があった。 実は14日から東京へ行っていた私は15日、聖路加病院のそばまで行った。お目にかかって、お見舞い出来る…

黒岩比佐子さんから得る人間力

文字から得るものは大きい。しかし、書いた作者にじかに会って、そこから得るものは文字以上のものを得ると実感した。黒岩比佐子さんの『パンとペン』上梓を祝した講演会で感じたものは今、じわじわ、ひたひたと私の中で大きく広がってきている。勿論作品を…

黒岩比佐子、むのたけじ『戦争絶滅へ、人間復活へ――93歳・ジャーナリストの発言』を読んで

むのたけじ氏の話を黒岩比佐子さんが聞き手になってまとめた『戦争絶滅へ、人間復活へ――93歳・ジャーナリストの発言』(岩波新書)の5刷が決定したとのこと。5刷ということはそれだけ多くの読者の要望が強いことを表わしている。そこで先回の書評を再度載せ…

黒岩比佐子著『『食道楽』の人 村井弦斎』を読んで

『食道楽』の人 村井弦斎作者: 黒岩比佐子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/06/25メディア: 単行本 クリック: 64回この商品を含むブログ (24件) を見る すぐキレル現代っ子、肥満、過食、拒食、孤食の害と原因が報じられようになって久しい。そこで注…

]黒岩比佐子著『パンとペン』を読んで

パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い作者: 黒岩比佐子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/10/08メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 155回この商品を含むブログ (69件) を見る 日露戦争が始まる前、社会主義者の堺利彦が親友の幸徳秋水と共…

皆様へお願い

ここのところ、日々、黒岩比佐子さんの名前や『パンとペン』『『食道楽』の人 村井弦斎』についてこのブログで取り上げ、書評を書いてきた。黒岩さんはフリーランスのライターとして活躍している。今最も注目されているノンフィクションライターである。その…

『パンとペン』新聞書評

パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い作者: 黒岩比佐子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/10/08メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 155回この商品を含むブログ (69件) を見る 黒岩比佐子さんの近著『パンとペン』の書評を多く目にする昨今…

佐野洋子さんを偲んで『役に立たない日々』

「100万回生きたねこ」などのロングセラーで知られる絵本作家の佐野洋子さんが乳がんのため、5日、東京都内の病院で亡くなりました。72歳でした。 ご冥福をお祈りすると共に、その作品の書評をここに再掲載してその死を悼みたいと思います。役にたたな…

『女書生』

民俗学の体系を継承した社会学者で、「思想の科学」を中心に研究・執筆活動を続けた上智大名誉教授の鶴見和子さんが2006年7月31日、死去した。88歳だった。 1918年、東京・麻布生まれ。津田英学塾(現在の津田塾大)を卒業後、米国に留学。64年に…

『井伏鱒二/弥次郎兵衛/ななかまど』

井伏鱒二・弥次郎兵衛・ななかまど (講談社文芸文庫)作者:木山 捷平講談社Amazon 中央線沿線の文士が、戦前・戦後を通じて、将棋と酒を友として集ったのが阿佐ヶ谷会。 井伏鱒二、太宰治、三好達治、青柳瑞穂、木山捷平、上林暁、外村繁などの文士がこの会に…

言葉の常備薬

言葉の常備薬作者:呉 智英双葉社Amazon本書は滅法(めっぽう)おもしろい本である。 と「ナニゲニ」書いたけれど、「滅法」の語源はなんだろうか?著者はこんな私をあざ笑うように次のように言う。「シロートが一時間考え込むより、一分かけて辞書を引いた方…

『三四郎はそれから門をでた』

三四郎はそれから門を出た作者:三浦 しをんポプラ社Amazon 本書は本や漫画に関するエッセイをまとめたブックガイド&カルチャーエッセイ集である。前半は「書評」集となっている。ちょっとくだけた口調と爆笑ネタをふんだんにちりばめながら、要点はかっちり…