飛翔

日々の随想です

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「巖頭之感」と漱石と神谷美恵子

1903年(明治36年)5月22日、一高生・藤村操が、日光・華厳滝わきの大樹を削り、そこに「巖頭之感」と題した墨書を残して滝壺に身を投じた。 弱冠16歳、日本近代史学の祖として高名な那珂通世博士の甥でもあった少年哲学者の自死であった。 16…

能「海士(あま)/窕之伝」:観能記

能楽堂における能の鑑賞レビューの再掲である。 名古屋能楽堂において青陽会定式能が催された。 仕舞「鐘之段」近藤幸江 能「頼政」梅田邦久、 杉江 元、椙元正樹、 佐藤友彦、今枝郁雄 能「海士/窕之伝」久田三津子、澤 拓海、 高安勝久、橋本 宰 (間)井…

フロイスのみた戦国日本

フロイスの見た戦国日本 (中公文庫)作者: 川崎桃太出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2006/02/01メディア: 文庫 クリック: 12回この商品を含むブログ (9件) を見る ヨーロッパの十五、六世紀は大航海時代と呼ばれ、富と領土獲得を求め発見の世紀であった…

今日は風もなく暖かな春の週末である。 コートを脱いで外に出る。明るい日差しがまぶしいばかり。暖かでどこかへでかけたくなる。 こんなときは、旅心をくすぐられる。かつて旅を枕にしていたときが在った。ヨーロッパ中を車で走り、留学時代の友人宅を訪ね…

これあげる!

人になにかを「さしあげる」って難しい事だと思う。 「あげる」っていう言葉は何だか上から見下ろすようなきがしないでもない。 「これあげる」っというと、貰うほうは自然発生的に「ありがとう」という言葉が出る。これが貰う側もあげる側も、何の違和感も…

NZ大地震

ニュージーランドで大地震があった。日本人留学生や現地の人たちに多数の死傷者がでているもよう。日本の救援隊の精鋭が現地に向かっている。 ニュージーランドには、かつて我が家で英会話を教えていたニュージーランド人の教師がいる。奥さんは日本人。連絡…

役に立たない日々

役にたたない日々 (朝日文庫)作者: 佐野洋子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2010/12/07メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 47回この商品を含むブログ (21件) を見る 読みながら何度も声をたてて笑ってしまった本である。そして、面白うてやがてしみ…

沈黙の春

沈黙の春作者: レイチェル・カーソン,青樹簗一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1987/05メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (9件) を見る最近永久歯が生えてこないという子どもがふえているとか。 永久歯は母親の胎内にいるときに、永久歯の…

古川柳おちぼひろい

古川柳おちぼひろい (講談社文庫 た 2-7)作者:田辺 聖子講談社Amazon いまやサラリーマン川柳は大人気である。 五七五の句の中に現代の世相を見事に織り込んでいて、ひざを打って笑ったり、そうそうと大いに共感したりする。その川柳も、昔の川柳はなかなか…

北越雪譜

北越雪譜 (ワイド版岩波文庫)作者: 京山人百樹,岡田武松,鈴木牧之出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/12/05メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (14件) を見る 暖かい地方に住む私は雪が降ると情緒があるとか、歌の一首、俳句の一句でも…

神保町「二階世界」巡り及ビ其ノ他

神保町「二階世界」巡り及ビ其ノ他作者:坂崎 重盛平凡社Amazon 著者はまえがきで本書を「自分の愛する世界」を書きとめたものだとしている。その「愛する世界」とは、古書であり、浮世絵であり、石版画であり、そしてなによりも愛するのは東京下町育ちの著者…

『日記逍遥 昭和を行く』

日記逍遥 昭和を行く-木戸幸一から古川ロッパまで (平凡社新書)作者:山本 一生平凡社Amazon 古今東西を問わず日記は人気がある。 本書は昭和初期の人物を中心にその日記から思いがけない人物や、意外な真相をみつけた日記読み(著者)の「日記逍遥」である…

マーメード・インと石井桃子さん

例えば「川から、どんぶらこっこすっこっこ」と流れてきたものな〜んだ? と聞かれて答えられない人はいないだろう。 正解は「桃」である。 これは桃太郎のお話をほとんどの人が知っているからだろう。 日本昔話や日本の童話は親から子へと読み継がれ、読み…

天降(あまくだ)り来(こ)むもの

今日は久しぶりの雨だ。 からから天気だったり、雪が降ったりと移り変わりが激しかったが、雨は久しぶり。 雨の様子によっては家族を駅まで迎えに行かなければならない。 外に出てしばし雨の降りしきる様子をみる。 昔の人は通い婚だったので、天気の良い日…

家族の歌

今日は気温がぐんぐん上昇してあたたか一日となった。日差しも明るく、春到来を思わせた。 ヘアスタイルも春らしくしたいと美容院へカットしてもらいに出かけた。ボブにしてちょっぴり愛らしくなった(?)布団を干したまま名古屋へ出てきたので、美容院から…

おんな作家読本

活字離れと言われて久しい。しかし漫画は売れに売れている。わが国の総理大臣も漫画オタクが輩出されるようになった。 そんな中、本屋の様相も変わってきた。店頭販売だった本がネットで販売され、古本のマーケットも様変わりした。これまで古本屋は男性が経…

グラミー賞受賞と日本人

アメリカの音楽界で最も権威のあるグラミー賞の最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞に、人気ロックバンド「B’z」のギタリスト松本孝弘さんとアメリカのギタリストによる共作アルバムが選ばれたのをはじめ、最優秀インストゥルメンタル・ソリス…

ヴァレンタインの日に捧げる詩(上弦の月)

上弦の月 とおいむこうの そのまたむこうの 広い大地と空一万年前のほら穴で あなたのかえりをまった 遠くで狩をするあなた言葉にならない言葉で あなたを呼び 歌にならない歌で あなたを恋うた幾つもの星がうまれ 幾つもの星がきえた半分に割れたマルメロの…

珈琲を詠う

一日に数杯のコーヒーを飲む。字面で言えば「コーヒー」というとアメリカンコーヒーのようなイメージがする。「珈琲」と書くと豆からゆっくりと挽いてネルでこしたドリップの味。豊かな香りまで文字から漂ってきそうだ。「コーヒー」「珈琲」どちらにしても…

妻の右舷

夫は毎日お弁当を持っていっている。朝お弁当をつめていると夫が「お昼は独りでパンを食べているんだろうなあ?珈琲をおいしく淹れてさ」と言い出した。 「え?私のお昼ご飯のことを心配してどうしたの?」と尋ねると、「ふと、昼間、どんな顔をして食べてい…

藤澤清造の戯曲発見!

芥川賞を受賞した西村賢太が藤澤清造に心酔していることは昨今有名になった。 心酔のあまり、清造の墓の隣に自分の生前墓を作ったことも知られている。 藤澤清造の全集を西村が芥川賞受賞賞金をすべてつぎ込んで出版するという。 さて、その藤澤清造とはどん…

雪憎し

昼なお暗き塩入峠 峠を閉ざす雪憎し あの人逢いたし 雪深し赤い着物に 白の打掛け羽織り はだける肩に 鼓持ち謡う調べは 蓮(はちす)の歌か 出家(しゅっけ)の人に 馳せる恋恋慕の情は 燃えさかり 雪を溶かして 僧の元鐘にひそみて 契りしを こぼれる萩は …

『愛猿記』

愛猿記 (1962年) (新潮文庫)作者:子母沢 寛新潮社Amazon 上野動物園で狼の檻の前で口笛を吹いたら尾をふって寄ってきて、子母澤寛の手をなめたとか、戦争中文藝春秋社の前あたりに凶暴な猿が箱にはいって歩道に出されていて白い牙で通行人をおどしていたとい…

ちょっといい話

ちょっといい話 (1978年)文藝春秋Amazon 安藤鶴夫は直木賞作家で、演劇評論家、であるが、そのライバルとも言われた戸板康二は同じように直木賞作家であり、劇作家であり、評論家でもある。あんつるさんの本を古書市でみつけたように、今日は古書店で買って…

相撲狂歌

大相撲がとうとう中止になるようだ。 国技が八百長というのでは、応戦するほうが肩透かし。そもそも、国技といっても、最近では日本国籍のお相撲さんを探すのが大変。国技と呼ばないほうがよさそうだ。 星の貸し借りをメールでやりとりし、お金と星が土俵の…

向田邦子ふたたび

[rakuten:surugaya-a-too:11616737:detail] 向田邦子の突然の死を偲ぶ追悼の文が寄せられたものだ。 筆頭は山口瞳による「向田邦子は戦友だった」 「直木賞をとらなければ、写真集を出そうなんて物好きな出版社もなかったろうに・・・」というテレビのほうの…

生命(いのち)あることの尊さ

2009年一月の歌会始のお題は「生」であった。 皇后さまの歌 生命 ( いのち ) あるもののかなしさ早春の光のなかに 揺り蚊 ( ユスリカ ) の舞ふ の歌に心を強く引かれた。「ユスリカ」は蚊に似ているけれど人を刺したりしない。川や池などの浄化に役立つとい…

これあげる!

人になにかを「さしあげる」って難しい事だと思う。 「あげる」っていう言葉は何だか上から見下ろすようなきがしないでもない。 「これあげる」っというと、貰うほうは自然発生的に「ありがとう」という言葉が出る。 これが貰う側もあげる側も、何の違和感も…

詩歌にみる日本独特の色の呼称

四季がある日本は季節の移ろいに情緒をかきたてられ詩歌を詠んだりする。 四季にともない風景の色も移ろうものだ。その色も日本古来の呼称があり音の響きと字面が感興を呼び起こし趣をそえる。 雨の歌と言えば古くは北原白秋が詠った「城ヶ島の雨」がしっと…

外国語表記の短歌

俳句や短歌は外国でも習作されている。一方、日本では外国語表記や英語の入った短歌というのがある。 英語表記の入った短歌といえば、 松村由利子の第二歌集『鳥女』に ・美しき想に遊ばず朝あさの電車に思うTo Do List(今日すべきこと) がある。 佐伯裕子…