飛翔

日々の随想です

2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

向井敏と百目鬼恭三郎と『四十一番の少年』

今は亡き向井敏は書評と言うジャンルを小説や他の文芸作品と並ぶ位置にした書評家であり、評論家であった。今では素人からプロまでさまざまな人が書評を書くようになった。書評家というとかつては<狐の書評>という覆面の書評家がいた。後年その素顔を明か…

雨もまた善き哉

天気予報どおり、雨。横殴りの風と雨の中、美容院へ行く。JR高島屋51階にある美容院からの眺めは最高だが、今日は雨でけぶって見えない。高層ビルのガラスも風に吹かれた雨粒がびっしりとかかっている。 しかし、気分は雲の上。高水圧でのシャンプーは頭髪…

『オール読物』創刊八十周記念特大号と向田邦子

久しぶりに『オール読物』(永久保存版 創刊八十周年記念特大号)を買った。追悼井上ひさし も読みたかったし、八十周年特別企画「私がであった作家(四十人が綴る四十人の作家たち)が面白そうだったからだ。 なるほど「永久保存版」とキャッチコピーにある…

猟奇歌

猟奇歌作者:夢野 久作発売日: 2010/02/01メディア: 単行本夢野久作はあの『ドグラ・マグラ』 をかいた作家であるが、ここで紹介するのは短歌である。 「猟奇歌」とあるように非日常性の色濃い歌が紡がれている。 「猟奇歌」は探偵誌『猟奇』に掲載された夢野…

シェイクスピアと『君死にたもうことなかれ』

英文学者の斎藤勇先生の本「英詩概論」を読む機会があった。初版は極めて古く1935年であり東京大学文学部における講義を整理したもの。 英詩の講義であるにもかかわらず和歌、俳句、漢詩などの比較をまじえた英詩概論の極めつけ。 その中にシェイクスピアの…

ひなびた我が家に春風が

今日は嬉しいことがあった。 午後からあいにくの雨となったけれど、遠方よりはるばるこのひなびた我が家に歌人の松村由利子さんがご訪問くださった。楽しくなごやかにお昼の卓を囲んで歓談できた。憧れの人、松村さんと膝を交えて、いや、お箸ごしにお話が出…

本を読む人

人を見かけで判断してはいけない。そう思っているが風貌の好みは自分でもいかんともしがたい。最近あるところである男性と話す機会があった。風貌はまじめそうで律儀な感じがする人であるが、それ以上でもそれ以下の感情も湧かない人である。しかし、日を追…

詩が稲を育てる

美しく咲いた桜を散らす雨が先日降り、もう葉桜になったのもある。 雨と言うとこの歌人を思い出す。 ・それはもう「またね」も聞こえないくらい雨降ってます ドア閉まります と詠った笹井宏之氏(ささい・ひろゆき)がお亡くなりになった。 笹井宏之は200…

蕪村と忠度

能「忠度」(ただのり)は世阿弥の作とされるもので、武将であると同時に歌人でもあった忠度(ただのり)の『千載集』(せんざいしゅう)についての執心と忠度(ただのり)最期(さいご)の有様を語る能である。 これは修羅物とよばれるものであるけれど、修…

萌え出づるも枯るるも同じ野辺の草

いつも京都へ出かけるときは必ず行く場所は『祇王寺』。 京都でも最も美しくわびしいまでに静寂な場所『祇王寺』 何度きても美しく心が落ち着いて日本の美を感じる場所。 こけむした庭。 紅葉のこだちごしに見える庵の詫びた風情は絶景。 このこけに秋になる…

マキャヴェッリ語録

マキアヴェッリ語録 (新潮文庫)作者: 塩野七生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1992/11/30メディア: 文庫購入: 20人 クリック: 83回この商品を含むブログ (118件) を見る時代を超える指導者論。 マキャヴェッリの思想の抜粋。政治とは永田町界隈で繰り広げら…

「いること」こそが なににも まして すばらしい」

うららかな春の日もきまぐれで変わりやすい。 人の心もお天気に左右されるのか揺れ動く時期でもある。 新しい職場や学校やクラスメイトと交わるうちにあんなに張り切っていた気持ちがいつのまにか自信がなくなったり、不安になったりする。 「自分はなんてち…

稀覯(きこう)本『西域画聚成』

昭和三十五年に三百部だけ刷られた稀覯(きこう)本『西域画聚成』。発刊は審美書院。雑誌に掲載されていたその美しさに魅せられた。 これは敦煌を中心とするトルファンの古代都市跡で発見された発掘画が六十図おさめられているものである。ロコタイプとよばれ…

憧れの人

名古屋覚王山一箱古本市に出店する予定を去年からしていたが、今月は忙しすぎて残念ながら見送ることにした。 なんとこの一箱古本市に憧れの林哲夫さんがいらっしゃっていたとは知らなかった!!!残念無念。昨日の柴田元幸氏のイベントに全精力を傾けて一箱…

トーク・イベント

今日は晴れてお花見日和の週末。 晴れていても寒くてコートは手放せない。 今日は翻訳家の柴田元幸氏をお招きして名古屋市内の隠れ家的名店JAZZ茶房「青猫」でトークイベントがあった。柴田元幸トーク・イベント「柴田元幸が選ぶ3冊」と題してお話をうかがう…

福原麟太郎とシェイクスピアとお能

英文学者の福原麟太郎先生を尊敬している。 それは河出書房から出版された小冊子『英文学入門』という名著を読んで以来のこと。この本は外務省の役人。つまり、外交官になったばかりの人に研修するときに作られた福原麟太郎先生の名講義を記録したものである…

料理上手の台所

今日は久しぶりに気温があがって暖かい一日となったが、時々小雨の降る天気だった。各地の桜はどうだろうか? 四月一日。新年度のはじまりだ。もうぎっちりと予定が6月まで詰まっている。 今月はさまざまなジャンルの方々とお目にかかる機会がある。翻訳家、…