昭和三十五年に三百部だけ刷られた稀覯(きこう)本『西域画聚成』。発刊は審美書院。雑誌に掲載されていたその美しさに魅せられた。
これは敦煌を中心とするトルファンの古代都市跡で発見された発掘画が六十図おさめられているものである。ロコタイプとよばれる平板印刷で、(通にいわせるなら、ロコタイプによる印刷は世界一美しいという人もある)画の説明は日本のグーテンベルクと称された知識人、本木昌造が起こした活版によるもの。実物でなく、雑誌の写真からでも色あせのない、美しい仏像がに目を見張らされる。
実物をみてみたい!神田神保町「一心堂書店」にはあるらしい。
ちなみにお値段は税込み30万円。
この稀覯(きこう)本『西域画聚成』を出版された翌年買った人がいる。それは書評にも書いたあの中谷宇吉郎氏だ。
昭和十六年(一九四一) 四十一歳
三月、凍上調査のため満州国に出張。
五月、「雪の結晶の研究」に対して日本学士院賞授与。
賞金(一千円)で審美書院刊の『東瀛珠光』と『西域画聚成』を購入。
貴重な賞金で買ったこれらの美術書。中谷宇吉郎氏はこんな面もおありになったのだと感激。
そういえば氏は南画をお描きになるのであった。
私もほしいなあ・・・・・・・