飛翔

日々の随想です

2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

へちま襟のチョッキ

年の離れた従姉(いとこ)は美人で女優をしていた。売れない女優と云うのはいつも貧乏だ。小遣いがたりなくなると、父の会社に電話をかけてきて、お昼をご馳走になり、家に来て泊まって行った。 子供心にも美しくみえた従姉は憧れの的。彼女は、手ぶらではき…

A Pale View of Hills

やっと“A Pale View of Hills"を読了。 平易な英文なので読みやすかった。 カズオ・イシグロ独特の世界、もやの中からたちのぼる叙情に古い映画を見終わったような感慨を抱いた。 カンタベリーの町を見下ろすあの大學でこの小説の構想などを練っていたのだろ…

ワダヤセイ

昔、英国で音のつながり(子音で終わった単語の次に、母音で始まる単語がくると、語尾の子音と語頭の母音が連結されて発音される)を「リンキング」と習った。 このリンキングのパターンをいくつかマスターしたら「発音」「聴く」力が急に伸びた。 高校や中…

葦(よし)ずして囲ふ流れや冷やし瓜

日本列島沸騰しそうに暑い一日となった。 名古屋地方は最高気温35,6度。まだ梅雨明け宣言が出ていないのに、この暑さはどうだろう! 外へ出ると紫外線にやられてしまう。節電のため、家の中ではエアコンはつけられない。 一日に何回もシャワーをあびることに…

すゞしさや月ひるがへすぬり団扇(うちわ)

・すゞしさや月ひるがへすぬり団扇(うちわ) 祐甫 (『古句を観る』柴田宵曲 より) この句は元禄時代のもの。「ぬり団扇」というのがミソ。 現代はエアコンが普及したのでちょっと暑いとすぐエアコンを入れる。 団扇(うちわ)などは商店で配ってくれる宣…

千すじの黒髪

千すじの黒髪―わが愛の与謝野晶子 (文春文庫)作者:田辺 聖子文藝春秋Amazon田辺聖子さん渾身の作品。『千すじの黒髪』田辺 聖子著 文芸春秋 (1987)(わが愛の与謝野晶子)書評ゆるしたまへ二人を恋ふと君泣くや聖母にあらぬおのれの前に わが外(ほか)に君…

『父のこと 母のこと』

父のこと 母のこと発売日: 2004/03/19メディア: 単行本 父や母を思うとき、そこには家族の歴史があり、生活があり、時代が映し出される。子の視点からとらえた父や母の姿を描いたものが本書である。 日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した歴代の作品の中から…

父の帽子

父の帽子 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)森 茉莉講談社 森鷗外は二十七歳で結婚。長男於菟を得た後、離婚。十一年後に鷗外が「美術品の如き」と評した美女、志けと再婚。本書は長女茉莉が父鷗外との日常を中心に自らの半生を綴った回想記であり、日本…

闇に舞う蛍

今日も暑い一日だった。気温は名古屋で34,9度。 エアコンをつけず、扇風機で我慢。 夜7時半ごろ、近くの公園で「蛍を見る会」があった。 蛍の卵からかえして成虫にしたもの。 平家ボタル 蛍の幼虫 蛍の卵 闇に舞う蛍 蚊帳の中に放して遊んだ蛍も、田んぼで…

本物と偽者

ホームベーカリーを買って以来一週間にパンを4回以上焼く。一斤などはあっというまに食べてしまう。 便利なホームベーカリーにすっかり骨抜きになって手作りパンをこねなくなった。 便利といえば驚いたことが一つある。それは多くのお弟子さんをかかえてい…

夏座敷

暑苦しさをわすれるような、思わず笑いがこぼれてしまう、こんな句をどうぞ! ・夏座敷あぐらかいてもわが娘 (八木忠栄 「雪やまず」所収) ※作者は長年詩人として活躍していた人で、還暦を記念して上梓した句集の中の一句。

季節の和菓子

和菓子は芸術品のような趣がある。 季節を写した和菓子は職人の美意識と腕のさえが形となったものだ。 「川口屋」名古屋市中区錦3-13-12 の和菓子。涼やかで口どけがよく絶品。 暑い時期は冷たいものを頂くよりも、熱めにいれたお煎茶とか、お抹茶を点てて和…

向田邦子全集(エッセイ)

向田邦子全集(3)向田 邦子文藝春秋このアイテムの詳細を見る 「文は人なり」と言う。 文を書くということは、書き手の思考や思想、ひいては人柄までにじみでてくる。 しかし、論文や公に出すもの、特に新聞などは事実を忠実に伝えることを主とするものは書き…

お姉さんは魔法使い

年の離れた従姉のお姉さんは美人で女優をしていた。 売れない女優と云うのはいつも貧乏。お小遣いがたりなくなるとお昼時に父の会社に電話してお昼をご馳走になるのだった。ついでに家に来て泊まって行く。 子供心にも美しくみえた従姉は憧れの的。従姉はお…

桜桃忌と石井桃子さん

6月19日は「桜桃忌」 1948年6月19日は太宰治の39歳の誕生日であり、玉川上水で愛人の山崎富栄(当時28歳)と共に入水し遺体が見つかった日でもある。太宰の墓のある三鷹の善林寺では多くの太宰ファンが「桜桃忌」に集う。 今は亡き石井桃子さんの全集「石井…

自分の家だけで通用する言葉

自分の家だけで通用する言葉ってありませんか? 例えば我が家の場合、実家では「パチリンコン」と云う言葉はホットサンドイッチ用の器具を差します。 パチンコではありませんよ。「パチリンコン」。これはパンを「ぱちりん」と挟んで焼くので「パチリンコン…

書物随筆の面白さ

小説や詩、短歌を読むのは好きであるけれど、随筆を読む楽しさは格別なものがある。 特に書物随筆は楽しくて読書子にとっては読まないで通り過ぎることができないものである。 先ず「書物に関する雄」は森銑三と柴田宵曲著『書物』(岩波書店)をあげたい。…

座布団と夫婦

私がいつも尻の下に敷いているものは何か? 「それは僕だ」と夫は言う。 大学時代からの付き合いである夫は親友でもあり、喧嘩友達でもある。お互いのよいところも悪いところも知り尽くして結婚した。いまだに学生時代のままの雰囲気の二人だ。鏡を見なけれ…

いちまいだけ残ったバラのはなびら

汗ばむ陽気になって紫外線がつよくなってきた。 英国にいた頃、友人たちとお茶を飲みに行った帰り、Body Shopに立ち寄ることが多かった。香りの良い石鹸やボディー・ローション、オイルなどが美しく陳列されていてオイルなどは好きな香りのオイルを調合して…

ピンクの封筒

いろいろなものを片付けていたら、ピンクの封筒がでてきた。昔、塾で教師をしていたときの生徒からのものだった。 卒業するとき、いままでの授業の感想や私へのメッセージを生徒一人一人に書いてもらうことにしていた。 「先生の授業はとっても面白かったし…

お知らせ

掲示板を作りました。 皆さんの近況や写真、旅先での思い出などをお寄せください。 こちら↓から投稿してください。お待ちしています。 「掲示板」 皆様の楽しい交流の場になると嬉しいです。

ぬかみそとブリア・サバラン

浅漬かりのキュウリやニンジン、茄子、キャベツなどはサラダ感覚で食べられる。 母のぬか漬けは最高に美味だった。 私は別名「キュウリ夫人」と呼ばれるくらいキュウリのぬか漬けが好き。 それも浅漬かりしか食べない。 そこで母は私が起きる時間から逆算し…

オニヤンマ

梅雨の晴れ間。よく晴れて気持ちの良い朝を迎えた。ポストに郵便物を取りに行くと、観葉植物の葉の上に珍しい「オニヤンマ」の姿があった。 体調12cmはある勇姿である。 来週の後半は近くの公園に蛍を見に行く予定である。夏を実感し始める頃である。

不思議な日本語 段駄羅

不思議な日本語段駄羅―言葉を変身させる楽しさ作者: 木村功出版社/メーカー: 踏青社発売日: 2003/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 「段駄羅」(だんだら)という言葉を聴いたことがある人は少ないのではないだろうか。 「段駄羅」(だ…

「世界のディーバ(歌姫)」と歌の力

「世界のディーバ(歌姫)」のシリーズをテレビで見た。 マリア・カラス、ビリー・ホリデー、ジャニス・ジョプリン、エディット・ピアフだった。 この四人に共通するのは「愛」を求めても求めても、愛が成就できなかったことだ。エディット・ピアフもビリー…

セピア色の昭和

セピア色の昭和――記憶の断章作者:本間 千枝子岩波書店Amazon 随筆を読むのが好きだ。作り物(虚構)にはない著者の体温が感じられるからだ。 紹介する本書は題名のように昭和一ケタ生まれの著者が経てきた「昭和」の出来事のエッセイ集である。その生い立ち…

神保町「二階世界」巡り及ビ其ノ他

神保町「二階世界」巡り及ビ其ノ他作者:坂崎 重盛平凡社Amazon 著者はまえがきで本書を「自分の愛する世界」を書きとめたものだとしている。その「愛する世界」とは、古書であり、浮世絵であり、石版画であり、そしてなによりも愛するのは東京下町育ちの著者…

NHK「おひさま」と「君死にたもうことなかれ」

朝の連続ドラマ「おひさま」の主役陽子は新婚の翌日夫が出征していくのを見送らず職場に出向く。それは夫のたっての望みだからだった。 職場である国民学校の宿直室でこらえ切れず同僚の女先生の胸の中で泣く。 「いかないで。どうぞご無事で帰ってきてくだ…

マーチ家の父 もうひとつの若草物語

マーチ家の父 もうひとつの若草物語作者:ジェラルディン ブルックス武田ランダムハウスジャパンAmazon 子供の頃『若草物語』を夢中で読んだことがある。 本書は19世紀マサチューセッツ州コンコードのオルコット家『若草物語』を下敷きにしたフィクションで…

柳家小三冶の独演会

柳家小三冶の独演会に行ってまいりました。 のっけから客はきつい皮肉をひとひねりやられました。っというのも名古屋の客はいけねえ〜!開演時間は6時半だというのに遅れてくる客が一杯! 開演時間が遅らされた。時間を守らない客。いわゆる「名古屋時間」 …