飛翔

日々の随想です

葦(よし)ずして囲ふ流れや冷やし瓜

日本列島沸騰しそうに暑い一日となった。
 名古屋地方は最高気温35,6度。まだ梅雨明け宣言が出ていないのに、この暑さはどうだろう!
 外へ出ると紫外線にやられてしまう。節電のため、家の中ではエアコンはつけられない。
 一日に何回もシャワーをあびることになる。
 風呂の残り湯で家中の拭き掃除をすると、汗が滝のように流れるが、気持ちが良い。玄関に打ち水をする。
 隣の家から風鈴の音色がしてきた。
 

 音色の主がどんな姿をしているのか、垣根越しに覗いてみるとヨシズがたてかけてある。
 今夏は節電で、ヨシズが売れるとか。おしゃれなカフェカーテンよりも、夏はすだれが涼しげだ。

 こんな風にすだれと風鈴は夏にはかかせないものだったなあと懐かしく思った。
 西瓜が食べたくなった。西瓜や瓜も夏にはかかせないものである。
 正岡子規の俳句にこんなのがある。

 葦(よし)ずして囲ふ流れや冷やし瓜(子規)

 茶店の前を通りかかると清水の流れがある。その流れをヨシズで囲っているのは何かと見ると、そこに瓜を投げ込んで冷やしているのだ。往来に茶店を出してヨシズで囲うのは珍しくもないが、流れをヨシズで囲っているところが珍しく斬新だ。そこに子規は目を見張ったのだろう。部屋の中で頭の中だけで俳句を作っているだけでは考え付かない実景である。
 これこそ写生が写生である素晴らしさにつきるというものだ。

 夏の風物詩にヨシズがいまだに健在であるのが嬉しくなる。節電も風流に一役かっている。