飛翔

日々の随想です

2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『小さいおうち』

作家やノンフィクションライターは膨大な資料を集めるだけでも大変な日数と労力がいる。そして集めた資料の読み込みだけに数年かかる。評伝の場合はそれだけに及ばず、それに関係した書籍や手紙、歴史的背景まで調べなければならない。気の遠くなる作業の末…

読書感想文のあり方

テレビでパソコンのコピー&ペーストについてが話題となったことがあった。 小中学生向けに開設された「コピペで書ける読書感想文」のサイトがアクセス数を伸ばして感謝されているという。 サイトの主が感謝されて喜んでいる様子が映し出された。 本を一冊も…

回想の父茂吉 母輝子

回想の父茂吉 母輝子 (中公文庫)斎藤 茂太中央公論社このアイテムの詳細を見る茂吉の長男,作家で医者である斉藤茂太の回想記『回想の父茂吉 母輝子』(中央公論社)を非常に面白く読んだ。 有名な「蝉論争」の真相について抜粋してみよう。 それは昭和初期の…

夏の庭

夏の庭―The Friends (新潮文庫)湯本 香樹実新潮社このアイテムの詳細を見る 薄い本なのに実に良い本であった。 登場人物は六年生の三人の少年たちと老人である。 喧嘩しながらも呼吸がぴったりあう三人の少年、木山、河辺、山下。 この物語は木山である僕が…

美味礼賛

美味礼讃 (文春文庫)海老沢 泰久文藝春秋このアイテムの詳細を見る 辻静雄は日本のブリア・サバラン。いや、今やそれ以上。いまや世界の辻静雄と言っても過言ではないと思う。 本物のフランス料理をわが国に最初にもたらした人、それが辻静雄。その辻静雄を…

「けっして会わない、声も聞かない」という約束

レターズ―ミセスXとの友情ダーク ボガード弓立社このアイテムの詳細を見る 本書は、「けっして会わない、声も聞かない」という約束の元、未知の女性にあてて書いた書簡である。 英国南部の美しい屋敷に住む映画スター。その記事を一婦人が美容院で目にする。…

命を支えるスープ

じっくりと、ことこととお鍋が台所で湯気を立てている。 幸せを絵にするならばそんな風景ではないだろうか?そんな台所からうまれた滋味豊かな本を紹介しよう。 『いのちを支えるスープ』 いまや著者の辰巳 芳子さんはテレビでもひっぱりだこ。 料理教室に入…

無人島に生きる16人

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)須川 邦彦新潮社このアイテムの詳細を見る夏休み最後の週末となって、真っ青になっているのは誰でしょう? 夏休みの宿題がまだ残っている生徒諸君ではないだろうか? 特に読書感想文がまだ残っているあなた!にお勧めはこれ…

河野裕子さんの絶唱を聞く

2008年11月号の「短歌研究」に河野裕子さんの「体力温存」の歌20首が掲載された。 お亡くなりになってまたこれを再読すると、自らの病と夫を想い、子を想い、来し方を想う絶唱を聞くおもいになる。その時の記事を再掲載する。短歌研究 2008年 11月号 [雑誌…

緑陰を求めて

昨日は曇り空の中、緑陰を求めて信州方面へ一族郎党引き連れてドライブに出かけた。 高速道路は渋滞を見込んでやめて一般道をひた走る。豊田を通り抜けて足助(あすけ)方面へ向かう。豊田市は広く、豊田関連の工場や会社はお盆休みで車も少なく、すいすいと…

河野裕子さんの訃報に寄せて

12日。歌人の河野裕子さんがお亡くなりになった。河野裕子さんの歌は生活に根ざしたいい歌が多い。「日常」のありふれたものだからといってたかをくくる人は多いが、河野さんはそこに感性を投入させあざやかな歌にした。 河野裕子さんの訃報に多くの言葉を見…

歌人の河野裕子さんの訃報

歌人の河野裕子さんの訃報がはいった。 河野裕子さん(かわの・ゆうこ、本名永田裕子=ながた・ゆうこ=歌人)12日午後8時7分、乳がんのため京都市の自宅で死去、64歳。熊本県出身。葬儀は近親者のみで行い、後日お別れの会を開く。喪主は歌人で京都産…

たのしみは 朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲けるを見る時

太陽が顔を出しはじめた朝のしじまの中、書斎で仕事をはじめた夫の邪魔にならないよう、私も家事を始動する。植木や花に水遣りをする。朝顔の藍色の美しさに思わず「わ〜ぁ、綺麗!」と言うと夫が後ろから 「夏の楽しみは朝顔から始まるね」 と、にっこり。…

無常迅速

芭蕉の句に「無常迅速」という前書きつきで次のような句がある。 ・やがて死ぬけしきも見えず蝉の声 「無常迅速」とは人の世の移り変りは常にはかなく変転してやまない。時は移りゆき、形あるものは必ず滅する。一切が無常。こんな前書きをつけたこの句は近…

長崎に原爆が投下された日に黙祷を

今日は長崎に原爆が落とされた日。広島だけでなく長崎まで。今のんびりとこうしてパソコンのキーボードを打っているが、65年前の今日、長崎は原爆の閃光を浴びたのである。平和になった今、日本人は子供が親を殺し、自分が産んだ子供を「自分の時間が欲しく…

壱町田(いっちょうだ)湿地植物群落

曇り時々雨の天候の中、愛知県指定天然記念物の壱町田(いっちょうだ)湿地植物群落を観に出かけた。 壱町田(いっちょうだ)湿地植物群落は知多半島と言う長靴のような形をした半島のふくらはぎあたりに位置する愛知県半田市武豊町の北西部にある。海抜40…

原爆投下の日に

原爆投下後、65年が過ぎようとしている今日。広島市中区の平和記念公園でひらかれた平和記念式典には被爆者や管総理ら5万5000人が参列。国連事務総長、駐日アメリカ大使がはじめて式典に参加した。秋葉広島市長は広島弁を使って非核三原則の法制化と核の傘か…

蝉しぐれ

明け方近くになってざっと激しい雨が降った。熱せられて乾いた大地と花木たちには恵みの雨だ。 朝、ガレージに向かおうとした夫の前を蝉が黒いかたまりのようになって飛んだ。夫がとっさに手でつかもうとした。私は 「つかまえないで!」 とさけんだ.短い命…

能(観世流)「蝉丸」替え型

蝉の季節だから「蝉丸」と言うわけではないが、お能のレビューを載せてみようと思う。(再掲載) 名古屋能楽堂での観能記の再掲載である。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 名古屋能楽堂定例会は 能「蝉丸」(観世流)泉嘉夫、近藤幸…

夏の日の思い出

太陽が顔を出しはじめた朝のしじまの中、書斎で仕事をはじめた夫の邪魔にならないよう、私も家事を始動する。植木や花に水遣りをする。朝顔の藍色の美しさに思わず「わ〜ぁ、綺麗!」と言うと夫が後ろから「朝の楽しみは朝顔から始まるね」とにっこり。 江戸…

川柳の三要素

川柳の三要素は「可笑しみ」「穿(うが)ち」「軽み」だそうな。 「可笑しみ」は分かるとして「穿ち」は何だろうか? 一つの言葉で多くを語ったり、的を得た表現をしたりすることという。 日経新聞のコラムによれば、「穿ち」の例をこう説明している。 『仲…

新美南吉の内なる悲しみ

海へ行くと必ず私は貝殻を拾う。好きな詩人 新美南吉は美しくはかない詩、作品を多く書いた。人は誰でも心のうちにかかえた悲しみをそれぞれに癒したり耐えたりして生きていく。そんな内なる悲しみを貝殻に、心を温めようとする南吉の詩を静かに味わってみた…

船場のレトロな建物たち

昨日行った大阪船場には由緒ある古き善き時代の建物がたくさんある。NHK総合テレビ「関西もっといい旅」ではこの船場の古き建物たちが映されたようだが、名古屋では残念ながら見ることができなった。その分、わずかではあるが、この目で見た建物たちを紹介し…

旅は道連れ

青柳瑞穂(あおやぎみずほ)という名前を聞いたことがあるだろうか? 青柳瑞穂はフランス文学で生計をたてる翻訳者であり、阿佐ヶ谷文士の一人でもあった。 仲間に堀口大學がいた。堀口大學は外交官の父とベルギー人の義母の家庭にあって、日常会話はフラン…