飛翔

日々の随想です

無常迅速

芭蕉の句に「無常迅速」という前書きつきで次のような句がある。
  ・やがて死ぬけしきも見えず蝉の声
 「無常迅速」とは人の世の移り変りは常にはかなく変転してやまない。時は移りゆき、形あるものは必ず滅する。一切が無常。こんな前書きをつけたこの句は近江の幻住庵にいたときの作。
秋の来るのも待たずして死ぬ蝉がそんなけぶりは少しもみえないで、死も生もすべてを天に任せきって夏の日差しの中で鳴いているのを見ると、そぞろに物のあわれを感じるということだろうか。
お盆の今日、今は亡き人たちを想うにつけ形あるものは必ず滅するという理(ことわり)がそぞろ悲しい。人間はとかく理屈をつけて生きるものだ。蝉のようにただひたすら生きてみればいい。生きねばならない。生きていたいのに死をよぎなくされる人の無念を思うとつらい。戦争がそうだ。一刻をむだにしないように生きよう。