飛翔

日々の随想です

2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

レモンと檸檬

ミニョン ゲーテ 「君よ知るや南の国」 森鴎外訳 レモンの木は花咲きくらき林の中に こがね色したる柑子(こうじ)は枝もたわわに実り 青き晴れたる空よりしづやかに風吹き ミルテの木はしづかにラウレルの木は高く 雲にそびえて立てる国や 彼方へ 君ととも…

アドリア海からの風

春のうららに気を任せそぞろ旅にでる 石畳を踏みしめ、アドリア海の風に長い髪をなびかせてかの地へと。 一冊の本をお共に、スパッカナポリの洗濯物がひるがえる下町の路地で ズッキーニの花の天ぷらをつまみながら、故国の春を懐かしむ。 そんな春の日の朧…

ディナモ ナチスに消されたフットボーラー

ディナモ―ナチスに消されたフットボーラー作者: アンディドゥーガン,千葉茂樹出版社/メーカー: 晶文社発売日: 2004/10/01メディア: 単行本 クリック: 19回この商品を含むブログ (12件) を見るバンクーバーオリンピックに沸いている毎日であるが、もう一つの…

宵待草のやるせなさ

今日は一通の通知を待ち焦がれていた。まるでラブレターが来るのを待ってでもいるように。そういえば、 ♪待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬさうな という古い歌があったっけ。『宵待草』(宵待ち草:よいまちぐさ)は、大正浪漫を代…

ドラマでないヒューマンドラマ

冬季オリンピックの観戦は本当に面白い。 思いがけない展開や熱戦、緊張がみなぎっていて創りものにはない迫真の場面ばかり。 例えばスケートショート・トラック女子3000mリレー決勝には中国、韓国、カナダ、米国が出場。韓国・中国がせりあって、韓国…

熟読玩味、味読に遅読

本好きの人の文を読むと私はしじみになる。いや、ちがった。しみじみしてくる。自分の読みの姿勢を正される。 そして考え方まで正される。つまらないことにかかずらわっている暇はないとおもうようになる。目の前に無窮の世界が広がっていることに気がつく。…

着古した服のように

今日は終日家族にパソコンを占拠されて使えなかった。 その代わりあんつるさん「安藤鶴夫」の名随筆をしみじみと読むことが出来た。歳月 (講談社文芸文庫)作者: 安藤鶴夫,槌田満文出版社/メーカー: 講談社発売日: 2003/02/10メディア: 文庫この商品を含むブ…

バンクーバー五輪 女子フィギュア目前に

いよいよ明日カナダ、ヴァンクーバー冬季オリンピックで日本が誇る女子フィギュア3選手が出場する。 日本中が声援を送って観戦するハイライトだ。 浅田真央ちゃんはわずか19歳。プレッシャーなどはねのけて力をだしきって頑張ってほしい!女子フィギュアス…

They Can't Take That Away From Me

エラ・フィッツジェラルドのスタンダードジャズを久しぶりに聴いてしみじみとしている。 オスカーピーターソンのピアノにルイ・アームストロングのヴォーカル。エラ・フィッツジェラルドとのデユオ。 二人のヴェテランが心から楽しそうに歌うその声に思わず浮…

ちょっといい話

ちょっといい話 (文春カセットライブラリー 11-1)作者: 戸板康二出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1988/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る古書店で買ってきた戸板康二の本「ちょっといい話」(文藝春秋)を早速読んでいたら読む端から面…

可哀想だた惚れたつて事よ

パンジーは三色菫とも言う。 菫で思い出すのがあの漱石の句。 ・菫ほどな 小さき人に生まれたし(明治30年)漱石 これはどうとればよいのだろうか? 道にひっそりと咲く小さな菫。 小さな存在だけれど懸命に咲くスミレほど愛らしいものはない。漱石はあれ…

歴代のアメリカ大統領のユーモア

とっておきの英語―第一線同時通訳者の秘蔵話作者:村松 増美毎日新聞社Amazonアメリカ史上はじめての黒人大統領が誕生した。オバマ大統領がその人である。 そこで歴代のアメリカ大統領のスピーチの中でもユーモアと人間味に満ちたものと、ユーモアがいかに大…

男の友情

作家開高健は谷沢永一氏の書庫にある本を読みたくて風呂敷を持って通いつめた。 谷沢氏は開高健と絶交しても書庫は常に開高に開放していた話は実に麗しい。 男の友情というものはかくのようなものか。 阿佐ヶ谷文士の面々も友情にあつかったし、佐藤春夫と堀…

『あんつる君の便箋』

>映画やテレビなどでは、死の淵にある人に泣きすがるシーンが多い。私が母のなきがらに対面したときは、その死を受け止められずに呆然と立ち尽くしていただけだった。ある日、散歩していた林道で一輪の花をみたとき、突如として涙があふれてとまらなくなった…

短い言葉の宇宙に遊ぶ

中国の詩人玉屑(ぎょくせつ)の詩の一節に「笠重呉天雪 鞋香楚地花」(笠ハ重シ呉天ノ雪 鞋ハ香シ楚地ノ花)=(かさはおもしごてんのゆき くつはかんばしそちのはな)というのがある。 「呉天」とは「呉国の空」で、「(都から)遠い異郷の空」のたとえである。…

回想の父茂吉 母輝子

回想の父茂吉 母輝子 (中公文庫)作者: 斎藤茂太出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1997/12メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (2件) を見る 斉藤茂吉の息子、斉藤茂太が書いた人間茂吉と茂吉一家の回想記である。 先ずは有名な「蝉論争」の…

Abbey Road Studios売却

連日ヴァンクーバー・オリンピックの放送に釘付けとなっているなか、あのビートルズのレコードの9割を作ったアビー・ロード・スタジオ (Abbey Road Studios)が売却されることになったというニュースがはいってきた。 アビー・ロード・スタジオ (Abbey Road S…

「ゆっくり成長できる人」上村愛子を讃えて

昨日は朝から雨だった。 駐車場から駅まで歩く道すがら水溜りをよけながら歩いたがキッドのショートブーツがしたたかはねをあげて濡れた。水溜りがあれば、それをよける。道を歩くならでこぼこ道より平坦な道を選ぶ。山道なら少しでも足場が良さそうなところ…

向田づくしの宵

向田邦子全集(3)作者: 向田邦子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1987/08/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 図書館でこの古い『向田邦子全集』を何十回借りただろうか? 文庫本で揃えるのが待てなくて図書館で一冊5cmはあろうかとい…

妻の右舷

朝お弁当をつめていると夫が「お昼は独りでパンを食べているんだろうなあ?珈琲をおいしく淹れてさ」と言い出した。 「え?私のお昼ご飯のことを心配してどうしたの?」と尋ねると、「ふと、昼間、どんな顔をして食べているんだろうか?と思ったのさ」と答え…

古書にもの想う

古書展へ行ったら父親が書いた本が古本として売られていてびっくり!全集である。日本全国を回って神社仏閣、秘仏などを見て歩き、日本を海外に紹介する為の書だった。 なんだか嬉しいようなさみしいような気持ち。安かった! 月日をかけて書いたものに値段…

苦沙弥先生の謡い

お能(謡曲、仕舞い)の稽古では「中之舞」を練習している。 中之舞とは多くは女性が舞い、その名の示す如く、速からず、遅からず、中庸を得た優艶な舞いである。 笛を地として大小鼓で囃す。太鼓入りのものもある。つまり楽器は笛、大小の鼓の伴奏(囃子)…

ゆっくりのんびりと

今日からここで腰をすえてゆっくりと書きたい。ちょっと心が疲れた。 好きな本のことなどのんびりと春の海のように書きたい。 な〜んていまさら何を言っちゃってといわれても仕方がない。今日は落ち込んでしまっているのだから。 でも今日はおかげで良い本を…

古本と前の持ち主

私のお宝本を紹介しよう。 六平太芸談 (1965年)作者: 喜多六平太出版社/メーカー: 同信社発売日: 1965メディア: ?この商品を含むブログ (3件) を見る この本は初版は昭和十七年に刊行され、その後、二十七年に改版刊行されたけれど、今は絶版になっている。 …

『花のほかには松ばかり』に寄せる一文

花のほかには松ばかり―謡曲を読む愉しみ作者: 山村修出版社/メーカー: 檜書店発売日: 2006/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (8件) を見る『狐の書評』で有名な<狐>が山村修氏であったとその素顔をあかしたのはつい最近のこ…

熊の敷石

熊の敷石作者: 堀江敏幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/02/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 49回この商品を含むブログ (48件) を見る三島由紀夫賞受賞作品「おぱらばん」で知られるように、仏文出身のこの著者の作品は不思議な雰囲気を醸す。 …

北越雪譜

北越雪譜 (ワイド版岩波文庫)作者: 京山人百樹,岡田武松,鈴木牧之出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/12/05メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (14件) を見る暖かい地方に住む私は雪が降ると情緒があるとか、歌の一首、俳句の一句でも…

木瓜(ぼけ)の花

わが家の庭には想い出深い木が一本ある。 木瓜の木だ。 花は白地にほのかな淡い赤がにじむように咲いて美しい。 入院している母に庭の木瓜の花を一枝とって持っていった。 花瓶にいけるとそこだけがあっというまにわが家の庭と化した。 「家に帰ったような気…

天からの手紙

めったに雪が積もらない当地にも、今朝は雪が降った。 朝、雨戸の隙間からやけに明るい光が差すと思ったら雪明りだった。 戸をあけると庭は一面の雪。「雪は天からの手紙」と言ったのは雪の結晶の研究で有名な物理学者,中谷宇吉郎さんの名言である。珍しい雪…

中谷宇吉郎随筆集 (ワイド版岩波文庫)

中谷宇吉郎随筆集 (ワイド版岩波文庫)作者: 中谷宇吉郎,樋口敬二出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/03/16メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (9件) を見る中谷宇吉郎は「雪」博士として世界的に有名な物理学者である。また大学時代の…