今日は一通の通知を待ち焦がれていた。まるでラブレターが来るのを待ってでもいるように。そういえば、
♪待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬさうな
という古い歌があったっけ。
『宵待草』(宵待ち草:よいまちぐさ)は、大正浪漫を代表する画家・詩人である竹久夢二によって創られた詩のタイトル、および歌である。
今宵は月も出ぬそうなどころか、今日は雨だ。宵待草のやるせなさを通り過ぎてしまって冷たい雨に心まで濡れてしまった。この雨は「こぬか雨」だろう。「来ぬ」雨だった。と洒落てみたもののがっかり。しょんぼり。
こういう日は庄野潤三の本をしんみり読むに限る。おだやかな日常が静かに暮れて行く庄野作品は雨の日に良く似合う。
「よく似合う」といえば、太宰治である。
上記にあげた「マツヨイグサ(待宵草)」は、ツキミソウ(月見草)などと同種の、群生して可憐な花(待宵草は黄色、月見草は白〜ピンク)をつける。夕刻に開花して夜の間咲き続け、翌朝には萎んでしまうこの花のはかなさが、一夜の恋を象徴するかのようで、後には太宰治も好んで題材とした(富嶽百景 「富士には月見草がよく似合う」)。
待てど暮らせど来ぬ知らせから連想ゲームのように頭の中を宵待ち草と月見草、太宰治に庄野潤三が通り過ぎていった。
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