飛翔

日々の随想です

随想

昭和のお正月

お正月の思い出 子供のころ、お正月は、こないほうがよいと思うほど家中が忙しかった。 年始の客が,ひきもきらず、我が家はてんてこまいの正月三が日を過ごしてきた。 「猫の手も借りたい」とはまさにその時の状況をさし、小学生の私も借り出されてお手伝い…

「昭和の日」にちなんで

今日は「昭和の日」とか。 私にとっては「天皇誕生日」のほうがなじんでいる。 つまり私は「昭和の人」である。 「昭和の日」にちなんで私が過ごした「昭和のお正月」風景を紹介したいと思う。 子供のころ、お正月は、こないほうがよいと思うほど家中が忙し…

棟梁

西岡常一(にしおか・つねかず)棟梁。法隆寺の棟梁で、最後の宮大工棟梁と呼ばれる名棟梁。 職人といわれる人はどれぐらいいるのだろうか? 子供の頃住んでいた渋谷の家は,名人棟梁と言われた人が建てた。 棟梁は住み込みをいれて数十人の職人をかかえる大…

雨宿り男と女

男と女がある日雨宿りがきっかけで言葉を交わす。 女は目にも妖しき色香漂う遊女の風情。男はというと男前の僧。 「遊女」の宿へ雨宿りを乞うた「僧」の物語。 さてどんな物語かというとこれはお能の中の一つ。「江口」という演目。 女は遊女「江口の君」。…

慎ましきもの

慎ましいものは地味で控えめであるけれど、奥ゆかしい美がかくれているものだ。 母はそんな慎ましい人だった。いつも大島紬の着物を着ていた。地味な大島の美しさは子供の私には分からなかった。他のお母さんのように華やかな服を着て花のようでいてほしかっ…

父と娘

がんらい、なまけものの私は学生時代は勉強もせず、試験のときは山をかける専門だった。 勉強していないので山がはずれたら悲惨だ。 勉強は自分の部屋でしないで居間の炬燵でするのが常だった。 炬燵のここちよさは、私から勉強の意欲を奪うばかりか、眠りの…

決して失われないもの

小学校の高学年になった頃のことだった。 私は大怪我をおって家に帰ってきたことがあった。母はいきなり私を抱いて胸をはだけて乳をふくませた。 母の膝からはみ出るほど大きななりをして、私は泣きながら母のおっぱいを吸った。 大きな私になぜそんなことを…

お布巾の怪

箸置きと銀の食器

高校・大学を通して同じ学び舎だったS子とはいまだにメールで切磋琢磨しあっている。一人でこつこつ勉強しているとくじけそうになるが、友もがんばっていると思うと励みになる。 友といえば、作家の北壮夫と辻邦生とは親友関係である。高校からの書簡のやり…

おみやげ三つ

「ただいま〜ぁ」 玄関に父の声がしたとたん、姉二人と私はわれ先に玄関に走る。 「おかえりなさ〜い」 三姉妹の声がそろってお出迎え。 「おかえりなさいませ」 母の優しい声が父を迎える。 姉二人は父の手からお土産の寿司の折詰を奪うようにとって居間へ…

蔵書印

小学四年生のある日、それは起きた。 名づけの由来を調べる宿題がでた。母に、 「百合子という名前は、誰が、どんな理由で名づけたの」 と尋ねた。母は、 「それはお父さんが、昔から百合の花が好きだったからよ」 と答えた。すると、そばにいた十三歳年上の…

It's never too late to learn

「俺に英語を教えてください」 四十代の男性が我が家に飛びこんできた。 外は晴れているのに白い長靴を履いている。 頭は角刈り。俳優の緒形拳に似た風貌をしている。着ている白衣の胸に油のシミがワンポイントのようについている。門に横付けされた軽トラッ…

偲んで

生涯を家族のため、人のために尽くして、ひっそりと世を去った母を偲びたいと思います。 「シャツ」 母は思わぬ場所で亡くなった。 師走のある日、母の小学校時代からの親友の病気見舞いに、朝から好物の煮物を作って、バスで病院へ行く途中の出来事だった。…

しらたまの

宿題ほどきらいなものはない。 先ず漢字の書き取りの宿題。これは流れ作業でやったものだ。つまり、草冠がつくものを練習する場合、草冠だけ先に50ぐらい書く。次に下の文字をテレビを見ながら書くのであるから覚えるわけがない。 自分の部屋が与えられたけ…

鈍感力

誰にも触れられたくない事はあるものだ。 何気なく人が口に出すとき、私もなにげなさを装って笑ったりする。 しかし、それからそのことがヒタヒタとインベーダーのように心の中に侵食してきて私を悲しめる。 一年たったある日。またその人たちと合わなければ…

おみやげ三つ

「ただいま〜ぁ」 玄関に父の声がしたとたん、姉二人と私はわれ先に玄関に走る。 「おかえりなさ〜い」 三姉妹の声がそろってお出迎え。 「おかえりなさいませ」 母の優しい声が父を迎える。 姉二人は父の手からお土産の寿司の折詰を奪うようにとって居間へ…

人生には思いもよらないことが突然おきることがある。 そんな時ほとんどの人が気が動転して自分をなくしがちだ。 そんな事件がわが家にも起きた。私は三人姉妹の末っ子。一番上の姉は一回り以上も離れている。 私が生まれたばかりの事だった。二番目の姉はま…

魔物の話

(子供たちがきゅうりを餌にカッパを釣ろうとしている写真) 理屈や理性などでなく、 凶暴な本能のままに流されてみたいなどと思うときがある。 それは狂気にも似ている。 過ちというものを犯すのはそんなとき。 昼と夜の間のつかのまのとき。 それは「逢う魔…

花や木や野菜の一番の肥料はなんですか?

散歩の魅力は何だろうか? それは車に乗っていては見えないもの、味わえないもの、感じられないものを味わえることだろう。 自分の歩幅で自由気ままに歩けることはなんともいえない爽快感がある。 車では見過ごしてしまうもの。それは道端に咲いている花だっ…

蔵書印

小学四年生のある日、それは起きた。 名づけの由来を調べる宿題がでた。母に、 「百合子という名前は、誰が、どんな理由で名づけたの」 と尋ねた。母は、 「それはお父さんが、昔から百合の花が好きだったからよ」 と答えた。すると、そばにいた十三歳年上の…

It's never too late to learn

「俺に英語を教えてください」 四十代の男性が我が家に飛びこんできた。 外は晴れているのに白い長靴を履いている。 頭は角刈り。俳優の緒形拳に似た風貌をしている。着ている白衣の胸に油のシミがワンポイントのようについている。門に横付けされた軽トラッ…

偲んで

生涯を家族のため、人のために尽くして、ひっそりと世を去った母を偲びたいと思います。 母は思わぬ場所で亡くなった。 師走のある日、母の小学校時代からの親友の病気見舞いに、朝から好物の煮物を作って、バスで病院へ行く途中の出来事だった。 バスに乗っ…

「くず湯」と介護の日々

世の中には老父母の介護生活をなさっている方が多い。 私も新幹線の回数券を買って東京まで介護していた数年があった。 費用も莫大で仕事をしながらの生活。金曜日の午後東京へ、月曜日には帰宅。帰宅するとすぐに仕事が夜9時まであった。 新幹線に 乗って…

出会いと別れ

ここのところ、ちょっとした嬉しいハプニングがあって笑顔が続く。 先日は顔も知らない、あったこともない空間(アマチュア無線)の友人と我が家で初めての出会いがあった。 十数年来の友人関係だけれど、 「初めまして」 と門を開けると会話が始まった。 初…

生きているって面白い

いつだったか、誰かが私に「とことんダメな人間を書いてみろ」 と言った人がいた。 どれだけダメな人間を想像しても、現実の世界にいる奇っ怪な人間には及ばないと思う。 結婚して田舎暮らしをしてみて、色々な人と交わってみて、ぬくぬくと育った私には想像…

地味は滋味に通ず

華美でなく地味でなく、上品に上質のものをさりげなく着こなす。 最近心がけていることです。 この年になると、今まで見えていなかったことが見えるようになったと思う。 人のなりふりの真意や、言葉の奥にあるものなど。 最近になって習い事を始めて、教師…

雨のトレモロ

今日は数十回目の結婚記念日。 大学時代からの喧嘩友達であり、先輩であり、 恋人でもあった彼と結婚したのは肌寒い秋の日の今日だった。 未熟者同士の若すぎる結婚だった。 初任給をもらったばかりの彼と新米主婦のおままごとのような新生活のスタートだっ…

「生きる」ということ

日々老人施設を訪れていると、 「命」「生きるということ」について考えさせられる。 長い人生でいろいろなことに遭遇する。 病気や災害、天変地異にあうこともある。 昨今では原発による人災にもあう。また戦争などに巻き込まれることもある。 そうした災害…

さんまは苦いか塩っぽいか

どこからかサンマが焼けるにおいが漂ってくる。 我が家でも秋刀魚を焼くことにした。 秋刀魚を焼くたびに思い出すのが佐藤春夫の「秋刀魚の歌」 谷崎潤一郎 佐藤春夫 かの谷崎潤一郎が妻千代の妹おせいに横恋慕し、そのおせいと外出し、妻千代をないがしろに…

「男は黙って」ちゃ、分からない

「男は黙って」っというキャッチフレーズが嫌いだ。 黙っていちゃ分からないじゃないか! 「黙っていたって「あ」「うん」の呼吸ってものがあるだろう?」 と言われたってそれは数十年肌身をあわせ、喧嘩して そんな夫婦だけに通じる言葉。 そうかと言って、…