飛翔

日々の随想です

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

苦役列車

苦役列車作者:西村 賢太新潮社Amazon 芥川賞受賞作品である。 受賞直後のインタビュー風景が強烈な印象を残した。片や良家のご令嬢風の朝吹さん。片や異形な風貌の西村賢太氏。そつなく出版関係の人に感謝を述べる朝吹さんはどこまでもお嬢様。家柄からして…

与謝蕪村と薩摩守忠度(さつまのかみただのり)

能「忠度」(ただのり)は世阿弥の作とされるもので、武将であると同時に歌人でもあった薩摩守忠度(さつまのかみただのり)の『千載集』(せんざいしゅう)についての執心と忠度(ただのり)最期(さいご)の有様を語る能である。 これは修羅物とよばれるも…

ボレーシュートが決まった!

今朝は眠かった人が多いのではないでしょうか。 深夜0時キックオフ、アジア杯決勝 日本1−0オーストラリア戦、日本がついに勝ちましたね。 絵に描いたような見事なシュートが決まった。 延長後半4分、李忠成が長友の左クロスに合わせ、そのまま左足でボレ…

白き点

今日も良く晴れて布団を干すのに好適な日和であった。 明日からは雪が降るとか。暖かな土曜日の午後は散歩が良い。近くには牧場があり、貸し農園のそばには馬場がある。乗馬教室もある。早朝、小学生ぐらいの女の子が乗馬しながら散歩している。ここは英国だ…

蜻蛉日記

蜻蛉日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)角川グループパブリッシングAmazon「かくありし時過ぎて、世の中に、いともはかなく、とにもかくにもつかで、世に経る人ありけり。」 (こうして女盛りの時もむな…

梅の花

美術館で「和漢朗詠集」の本物を見たことがある。 冷泉家の当主の水茎も鮮やかな文字は一幅の絵のような美しさだった。 そこにはこうあった: 池のこおりの東風(とんとう)は風渡って解く窓の梅の北面は 雪封(ほう)じて寒し ( 藤原 篤茂 ) (立春の日)…

文士のたたずまい 私の文藝手帖

文士のたたずまい 私の文藝手帖作者:豊田健次発売日: 2007/11/22メディア: 単行本 野呂邦暢の才能を愛した文人は多い。 向田邦子もそのうちの一人だった。 その野呂邦暢の作品『諫早菖蒲日記』を向田邦子に紹介したのは「文學界・別冊文藝春秋」「オール讀物…

ひっつき虫

[rakuten:book:12898751:detail] いつだったかこの杉本秀太郎さんの京都の自宅がテレビに映し出されていたのを見たことがあった。 京の町やの風情が残る素晴らしいお宅だったが、そこでの暮らしぶりにも目を見張った。 京都、綾小路通新町の角を左折すると、…

大寒

今日は暦のうえでは「大寒」。大寒(だいかん)は、二十四節気の第24。 現在広まっている定気法では太陽黄経が300度のときで1月20日ごろ。大寒の朝の水は1年間腐らないとされており容器などにいれ納戸に保管する家庭が多いとか。 インフルエンザが流行してい…

赤い糸

中学生になろうとしたある日、父がこういった。 「入学祝いをあげようと思うので、好きなものを言いなさい」 私はしばらく考えて「犬がほしい」と答えた。 次の日曜日、家族そろって新宿の三越の屋上へでかけた。ペット売り場には熱帯魚のほかにいろいろな種…

阪神淡路大震災から16年鎮魂を祈る

阪神淡路大震災から16年がたった今日、その鎮魂の祈りをささげたい。 夫の兄、大学時代の友人がいる阪神地区。心配して電話しても通じず、テレビからは刻々と大変な様子が映し出されたあの日。リュックに食料や水、衣類などをつめて夫は出かけたが交通が遮…

雪三題

今朝起きたら、窓の外は雪国だった。 温暖な当地に雪が積もっている。寒いわけだ。 休日の朝はゆっくり布団の中のぬくもりに包まれていたいものだ。お弁当つくりもなく、早起きする必要もない日曜日。 雨戸をあけて、ストーブをつけて居間と食堂だけ温めてま…

小正月

今日は「小正月」。 一年の邪気をはらって小豆粥を食べて無病息災を願うのが習わし。 小豆と言うのはたんぱく質、ビタミンB、鉄分が豊富な食物繊維の食品。肝機能を改善し、疲れた目を癒すとか。小正月に小豆粥を食べる習慣は「土佐日記」にも記されている…

人間観察の妙味と技巧のさえ

現代日本文学館〈第15〉有島武郎,里見〓@4CEE (1968年)作者: 小林秀雄出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1968メディア: ?この商品を含むブログ (2件) を見る 今日は朝から植木屋が庭木の剪定にやってきた。10時と三時のおやつを出して、ケヤキの剪定の相談…

木山捷平に於ける詩と散文の違い

詩と散文の違い、その持ち味の相違について詩人荒川洋治は様々な詩、散文の事例をあげ読み解き、読者と共に味わう趣を呈してきた。 ではここで論を多くするよりも、その事例を読み、「詩」と「散文」についての味わい比べをしてみようと思う。(『詩とことば…

It's a three dog night tonight.

Three dog nightという'70年代のグループがありましたが、three dog night というのは、"極寒の地に住む人が、寒い夜は犬と一緒に寝て暖をとっていたのが、犬が三匹いないと間に合わないくらい寒い夜だという意味です。 つまり、「ものすごっく寒い夜」のこ…

茶話

茶話と言えば有名な薄田泣菫の『茶話』(冨山房百科文庫)がある。完本 茶話 (上) 冨山房百科文庫 (37)作者: 薄田泣菫,谷沢永一,浦西和彦出版社/メーカー: 冨山房発売日: 1983/11/25メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る 国内外の…

臨床瑣談

親類縁者にガンをわずらうものが増え、私も数年前乳がんと誤診されたことがあった。誤診であることが決定する前、国立がんセンターでセカンドオピニオンを求め検診。そこで誤診がわかった。 そんな体験を思い出しながら『臨床瑣談 』(りんしょうさだん)中…

鉢に咲く梅一尺の老い木かな

毎年、植木屋が盆栽の梅を持ってきてくれる。 盆栽が海外では流行しているそうだが、小さな盆栽鉢に梅の古木が植わっているのをみると感動する。小さな空間に庭の梅の古木もかくやと思うような世界が展開しているからだ。苔むした木肌の梅に小さな花芽があり…

新成人に望むこと

明日は成人の日。成人の皆さん、おめでとう!育ててくださった親御さん、成人の日おめでとうございます。 病弱だった母が高齢になってから命をかけるように私を生んだ。そんな母の口癖は「お母さんは幾つまで生きられるかしら?」だった。それを聞くたびに私…

橘曙覧(たちばなのあけみ

橘曙覧全歌集 (岩波文庫)作者:橘 曙覧岩波書店Amazon 江戸時代末期の歌人に橘曙覧(たちばなのあけみという人がいる。 『橘曙覧(たちばなのあけみ)全歌集』(岩波文庫)の中から 独楽吟(どくらくぎん)と題した連作歌がある。 52首もの歌はすべて「たの…

「見巧者」(みこうしゃ)と「芸」

人間国宝「野村万作 芸と人生を語る」の講演を聞く機会があった。。 会場に着くともう万作先生はいらっしゃって招待客などに挨拶をしていた。羽織袴の着物姿に学者のような風貌は気品にみちて鶴のよう。 会場は立錐の余地もないほどの超満員。さすが人間国宝…

梅が枝

梅の花を折りて人におくりける ・君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をもしる人ぞしる (紀 友則(古今和歌集) あなたでなければ誰にみせたらいいのかしら。 この梅の花の、色にせよ香りにせよ、ものの美しさを解するあなただけわかっていただけるのです。…

七草粥と七草爪

明日は七草粥の日。 七草とは1月7日の朝に、7種の野菜が入った粥を食べる風習のこと。 芹(せり)薺(なずな) 御形(ごぎょう) 繁縷(はこべら) 仏の座(ほとけのざ) 菘(すずな)= 蕪(かぶ) 、蘿蔔(すずしろ)= 大根(だいこん) この7種の野菜を…

翻訳の妙

我が家には聖書が三冊ある。 一冊は『英和対照 中形新約聖書』(日本聖書協会) 昭和28年。 二冊目は『聖書』新改訳 1996年(いのちのことば社) 三冊目は『The MESSAGE』EUGENE H PETERSON(NAVPRESS) 私自身は特定の宗教をもたない。しかし、縁あって、英…

ある小さなスズメの記録

[rakuten:book:14002131:detail] 第二次世界大戦中のロンドン郊外で一羽の小スズメが左足と翼に障碍をもって生まれた。 自然界では生きていけないとみなしたのか、親鳥は巣からこの雛を落とした。 孵化したばかりのこの雛はピアニストの老婦人に拾われ、十二…

コンペイトウと信長

金平糖(こんぺいとう)です。 皇居でお祝い事があって参内するとお祝いの品として「金平糖」をボンボニエールと呼ばれる砂糖菓子を入れる小箱に入れて賜るとか。 この金平糖が日本に到来したのは信長の時代。宣教師ルイス・フロイスの書翰によれば、永禄12…

聞いて楽しむ百人一首

子どものころの楽しみといえば、家族で百人一首のカルタとりだった。 私の得意なカルタをひざのそばにおいて今か今かと待ち構えてついに読まれた!とたんに、父がとってしまって大泣きしたことがあった。 大泣きしているそばで母が父に「お父様ったら!ろこ…

松の内を詠む

お正月三が日が過ぎ、明日からいよいよ御用始め。 私にとっては「お弁当始め」の日。気持ちを引き締めて栄養のバランスよくおいしいお弁当を作ろうとはりきっている。すべての始めは「食べ物から」。 そして見た目もしゃんと折り目正しいように家族の服にア…

めでたさも中くらいなりおらが春

正月二日。 晴天に恵まれた初春の朝は気持ちが良い目覚めではじまる。今日からお年賀に出かける人や、迎える家が多いことだろう。晴れ着を着て初詣に出かけ新春を寿(ことほ)ぐのは日本人ならではの慣習だ。 元日の夜はテレビ・ウオッチングを楽しんだ。恒…