飛翔

日々の随想です

新成人に望むこと


 明日は成人の日。成人の皆さん、おめでとう!育ててくださった親御さん、成人の日おめでとうございます。
病弱だった母が高齢になってから命をかけるように私を生んだ。そんな母の口癖は「お母さんは幾つまで生きられるかしら?」だった。それを聞くたびに私はおびえた。今にも息絶えてしまいそうなきがしたからだ。
 私が二十歳になったとき、母は心から喜んだ。真紅の地に鶴が舞う振袖を母は縫った。記念に撮った写真が出来上がって、母は「綺麗な娘になったわね」と言って目をしばたかせた。
 まだ小学生の低学年の頃、学校へ出かけようとしていた私をつかまえて母はいきなり私の顔にお化粧をしはじめた。口紅をぬった顔をしみじみと見ながら母は「綺麗な子になるわね」と言って涙ぐんだ。私は口紅の感触も化粧の匂いも気持ちが悪くなって顔をぷるんと洗って学校へ走ってでかけた。
 今から考えると母は私が成人するまで生きていられないと思って小学生の私に化粧をして成人した娘の姿を思い浮かべようと思ったのだろう。
 いつも死と隣り合わせのように生きてきた母の娘を思う気持ちの表れだったのだ。 母は自分が死んだ後、後妻が入っても私が大学に進学させてもらえるようにと学資貯金までする用意周到さだった。先の先まで考えて子育てしてきた母を今になって想ってももう遅い。「成人の日」に母に真っ先に「二十年間ありがとうございました」と正座して感謝の気持ちを伝えておけばよかったと悔いる。
 「成人の日」を迎える成人の皆さんと親御さんのことを想う。
 景気不景気と変動の多い平成の御世。20年間を無事に育った子供を見る親の気持ちはひとしおのことだろう。
 毎年、テレビで新成人に感想を聞いているのを見ると「お酒が飲めるようになったのがうれしい」「飲み会に行こうと誘ってみたい」などと語る人がいる。大望をいだく青年はいないのか?いだけない世の中になっているのだろうかとさみしくなる。
 二十年間育ててくれた親に感謝の気持ちを伝えるのが「成人の日」にする真っ先のことだと私は思う。
 感謝の気持ちはすぐに伝えること。「ありがとう」を惜しんではいけない。どんなときにも、誰に対しても。ご両親に「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えてほしいと思う。
成人の皆さん、おめでとう!育ててくださった親御さん、成人の日おめでとうございます。