飛翔

日々の随想です

松の内を詠む


お正月三が日が過ぎ、明日からいよいよ御用始め。
 私にとっては「お弁当始め」の日。気持ちを引き締めて栄養のバランスよくおいしいお弁当を作ろうとはりきっている。すべての始めは「食べ物から」。
そして見た目もしゃんと折り目正しいように家族の服にアイロンをかけた。主婦の心意気をみせる瞬間だ。
親の背中を見て育つのは子供。私も母がそうやって夫をおくりだしたのを見て育った。見て育ったのに少しも影響を受けていないのは夫への謙虚で慎ましい態度だけだ。母は生涯,父に敬語で接していたが、私と夫は大学時代からの友人であったので、いまだに友達のような口のききかたをしている。謙虚で慎ましくしていたら「熱でもあるの?」と聞かれそうだ。
 さて正月はいつまでかというと「松の内」という言葉がある。「松の内」というのはお正月の「松飾り」をつけておく期間をいい、最近では1月の7日までのことをいうようだ。年賀状も15日まではOKなのだが、喪中の時に出す寒中見舞いが6日から。この「松の内」はまだお正月気分が残っているので、いつもはジーンズの私もお年始の客もいるので、和服に薄化粧をしている。

(貝に入れて使った紅(べに))
 さて、明治時代、この「松の内」の女性のみだしなみはどんな風だったかを詠った句がある。正岡子規はこんな風な一句を残している。
 口紅や四十の顔も松の内 (子規)
 
四十代の女性も年があらたまって松の内となれば、一つは儀式から、一つは身だしなみから、薄化粧をし、口紅もつけてちゃんとしている様子を詠んだのである。
 正岡子規と言う人は病床六尺の中にいても、きちんと世の中の普通の儀式や身だしなみなどを軽んぜずに詠む。そんな心意気のようなものが現れている一句だ。
 昨年は司馬遼太郎の『坂の上の雲』がNHKで放映され第二話がはじまった。正岡子規役の香川照之が写真の子規にそっくりで驚いたが、好演していた。病床に伏す役つくりの為17kgもやせたという熱演振り。「俳句は写生や!」と映像の中で叫んでいたが、上の句にもあるように瑣末な日常を捕らえて詠む、それが現れているように思う。
 さて、お正月の三が日が暮れようとしている。
 明日から仕事始めの方、気持ちも新たにお励みください。
皆さん!今年も元気でがんばりましょう!