飛翔

日々の随想です

めでたさも中くらいなりおらが春


正月二日。
 晴天に恵まれた初春の朝は気持ちが良い目覚めではじまる。今日からお年賀に出かける人や、迎える家が多いことだろう。晴れ着を着て初詣に出かけ新春を寿(ことほ)ぐのは日本人ならではの慣習だ。
 元日の夜はテレビ・ウオッチングを楽しんだ。恒例の衛星生中継ウイーン・ニューイヤー・コンサートを家族で楽しんだ。今年はウイーン生まれの指揮者ウエルザー・メスト。颯爽と現れた彼の容姿はシューベルトのよう。さすがウイーン生まれ。ウイーンフィルとは息がぴったりあって軽やかなワルツはこれぞウインナワルツと思うものだった。踊りだしたいようなリズムに酔った。目玉は生誕二百年を迎えるリストのメフィスト・ワルツ。ウイーンフィルが奏でるウインナワルツは耳で聞き分けられないわずかな間が特徴だとか。指揮者はこの間とどう付き合うか。
 途中、イタリア特集をほかのチャンネルでやっていたので、家族の何人かは別の部屋でイタリアを堪能していた。深夜は南アフリカ共和国の大統領、ネルソン・マンデラをモデルにした「インビクタス負けざる者たち」を見て感動した。クリント・イーストウッド監督の30作目の作品。
 1994年、大統領に就任したマンデラモーガン・フリーマン)は、不況や雇用不安、人種差別などの問題が山積する中、95年のラグビーW杯南ア大会の代表チーム「スプリングボクス」によって、南アフリカをチェンジ(変革)させていく軌跡を描いたもの。
 スプリングボクスの主将、フランソワ・ピナール(マット・デイモン)を通してマンデラの人物像を描いたイーストウッド監督の目の付け所が白眉。
 実際にマンデラ大統領を知っている人がこれを見てマンデラ役のモーガン・フリーマンがあまりにもマンデラに似ていたので驚いたという逸話が残っている。本当に味のあるいい役者だ。
 私が好きなマット・デイモンも好演している。
 豪華なキャストで演じられる数々の名画を茶の間の炬燵でお茶をすすりながら、寝転がりながら見られる醍醐味は正月ならでは。
 こんなめでたいことはない。
 しかし、もうすでにご馳走には飽きてきた。家族で一番好評だったのは、ロースとビーフでもなく、おせちでもなく、大根とにんじん、柚子の「紅白なます」だとは、少々がっかりするが、胃袋がご馳走に食傷するのだから、正しい評価だろう。
  めでたさも中くらいなりおらが春 (小林一茶
まだまだお正月ははじまったばかり。皆様のお正月はどんなふうでしょうか?