飛翔

日々の随想です

「ゆっくり成長できる人」上村愛子を讃えて

昨日は朝から雨だった。
 駐車場から駅まで歩く道すがら水溜りをよけながら歩いたがキッドのショートブーツがしたたかはねをあげて濡れた。水溜りがあれば、それをよける。道を歩くならでこぼこ道より平坦な道を選ぶ。山道なら少しでも足場が良さそうなところを探すものだ。

すっかりはねをあげて濡れてしまったショートブーツを見ながらカナダで行われている冬季オリンピックモーグルで4位になった上村愛子選手を思った。粉雪舞い上げながら華麗にシュプールを描くスキーの醍醐味と爽快さはスキーをやったものなら等しく感じることだろう。しかし、モーグルはそうはいかない。こぶこぶのでこぼこをのりあげ、落ちてまた乗り上げてを繰り返しながら猛スピードでスキーを操っていく競技である。腰やひざや全身に負荷がかかる。ちょっと転べば大変な怪我にもつながりかねない。大変な練習と運動神経と精神力がいるスポーツだ。
めったに泣かない上村愛子選手は流れる涙をぬぐいながら、「なんで一段一段なのだろう」と言った。長野五輪では7位、ソルトレークシティーでは6位。トリノで5位だったのだからそう思うのは正直な気持ちだろう。しかし、確実に階段を上がっていったことはすごいことである。バンクーバー五輪まで通算12年間もの戦いなのである。体力的にも精神的にも大変な12年がそこにはある。メダルをもらえなかったのは残念だが、メダル以上の言葉は母親の「よくがんばった。愛子はゆっくり成長できる人」の言葉であろう。
 「ゆっくり成長できる人」の言葉には娘のこれまでの頑張りを知っている母の愛情が詰まっている言葉だ。12年間、平坦な道でなく、「こぶ」の道と取り組んできた娘の全霊を讃えてやまない言葉だ。
 スポーツでも仕事でも勉学でもスランプはある。スランプはいわば「こぶ」のようなものだ。「こぶ」を乗り越えるまでが苦しい戦いなのだ。その途中でたいがいは挫折してしまう。しかし青あざつくりながらも「こぶ」を乗り越える精神力がその先の道を照らすあかりになる。
 そんなことを感じさせてくれた上村愛子選手と母圭子さんの言葉だった。