飛翔

日々の随想です

無人島に生きる16人

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)
須川 邦彦
新潮社

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夏休み最後の週末となって、真っ青になっているのは誰でしょう?
 夏休みの宿題がまだ残っている生徒諸君ではないだろうか?
 特に読書感想文がまだ残っているあなた!にお勧めはこれ。
 薄い本なのですぐ読めて楽しく、勇気がわいて、新学期に向けてやる気がわいてくること間違いなし。
 そして宿題などもう数十年忘れていたあなたにモお勧めです。
 管理職のあなた!ぜひ読んでください。人をたばねるというのはこういうことではないだろうか?
 そして何よりもよいのはこれはフィクションでなく実話であることだ。


 明治31年、帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁し、脱出した16人を乗せたボートは、珊瑚礁のちっちゃな無人島に漂着した。これは実話である。

 水もない無人島でのサバイバルに欠かせなかったのは16人全員の心が一つとなって気弱になることなく前向きに過ごすことだった。
それは船長を軸として心の土台を築くことにあった。
 無人島に漂着した日、船長はある決心を年長の3人(運転士、漁業長、水夫長)にこう伝えた。

「いままでに、無人島に流れついた船の人たちに、いろいろと不幸なことが起こって、そのまま島の鬼となって、死んでいったりしたのは、たいがい、じぶんはもう、生まれ故郷には帰れない、と絶望してしまったのが、原因であった。私は、このことを心配している。いまこの島にいる人たちは、それこそ、一つぶよりの、ほんとうの海の勇士であるけれども、ひょっとして、一人でも、気がよわくなってはこまる。一人一人が、ばらばらの気持ちではいけない。きょうからは、げんかくな規律のもとに、十六人が、一つのかたまりとなって、いつでも強い心で、しかも愉快に、ほんとうに男らしく、毎日毎日をはずかしくなく、くらしていかなければならない。そして、りっぱな塾か、道場にいるような気もちで、生活しなければならない。この島にいるあいだも、私は、青年たちを、しっかりとみちびいていきたいと思う」

そしてどんなことがおこっても怒らないこと、叱ったり、小言を言ったりしないと決めたのだった。
水もない砂だらけの無人島で水の確保や食糧の確保、住まいの建設、近くの島への探検と調査など人間の知恵の働かし方には目を見張らされる。
無人島へ16人もの男が流れ着くと必ず誰かがわがままだったり自分勝手になるものだけれど、リーダシップのもとすがすがしいばかりの一致団結である。
時には笑い声が無人島に響いたり、アザラシと友達になったりと悲壮感が一つもないのは全員がすかっとした海の男の魂を持っていたからだ。
いつの日か助け出されたその日には日本の海の男のみだしなみとして恥ずかしくないように船長は船長帽を他のものはズボンと上着を大切にすることを忘れなかったとはまったく泣かせる。
そしてついに無人島でのサバイバルが終わりとなり助け出されるときは読みながら拍手喝采である。
一人一人の力は弱いけれど一人一人の真心と知恵と努力を集めた16は大きい。リーダシップとはかくなるものだと思わされた。
一国の総理が途中で投げ出す昨今の状態は嘆かわしい限りだ。
お手本になる大人が経験と実績が積み重なっているがゆえ下のものはついてくるのである。無人島ではなおさら机上の空論などは役に立たない。ましてや学歴や家柄などなんの役にもたたないのである。
 子供の頃こんな物語を読んだらどんなにかすがすがしく前を向いて生きて行きたくなるだろうと思う。
 パソコンやゲーム機に張り付いていないでこんな実話を読んで心を広く生き生きとした世界があることを知ってほしいものだ。
 大人が読んでも勿論楽しい。リーダーシップとはかくなるものと学べるであろう。