飛翔

日々の随想です

原発に代わる自前のエネルギーを持とう!

東北地方大地震津波福島第一原発事故から一年二か月が過ぎたが、原発事故の完全なる終息はまだまだ先のようだ。
 この未曾有の地震原発事故で、われわれ国民は戦後はじめて自国のことや環境、エネルギー問題について真剣に考えるようになったのではないだろうか。
 今まで飽食の時代にも叫ばれた食べ物や資源の浪費問題は、頭では分かっていても、肌身となって真剣に考えることはなかった。しかし、原発事故で計画停電になったり、一度核分裂したらとどまることがない原子核の恐ろしさが差し迫ってくると、嫌でも考えなければならなくなった。

 莫大な量の電力の浪費や、大切な食料の廃棄がどれだけ無駄なことだったかを見直す機会になった。
 そして原発を反対する私を含めて、それを阻止する言葉もなく、その恩恵に浴してきたことも考えなければならない。かつて戦争反対の気持ちがあっても、言葉に出さず、ずるずると戦争に介入していった過去とあわせて考えてみたいものだ。
 独占企業のような電力会社は国の政策とリンクするように競争相手もなく「原発安全」神話の元、最悪のシナリオを描くこともなく「原子力」を利用してきた。
 地震列島のわが国。原子爆弾を落とされた唯一の国である日本。
 その国に原子力の平和利用という名のもとに地震の巣の真上に巨大な原子力発電所を何基も稼動させている。福島第一原発ではいまだに高濃度の放射能を含んだ水がたまりにたまっている。その溜まった水をどこに捨てるのか?何年かけて水をかけるのか?放射性廃棄物のたまった水はどこにいつまでプールしておくのか?その水が津波にやられたら、日本中が汚染されるどころか、海に流れ地球規模の汚染となる。
 日本の技術力をもってすれば、原子力にとってかわる自然エネルギーや別のエネルギーを考え出せるはずだ。日本中の家屋に太陽光発電を設置するとか、知恵はわいてくるものだ。何しろ人間は月まで行くロケットを開発したのだから。
 静岡県にある揚水発電所で賄う電力は原発二基分だとか。

 地震災害がいつわが身に起こるかわからない。いや。東南海地震の確立は87パーセントでやってくる。つまり、明日はわがみである。原子力発電所の存在について考えてみたい。また家族の絆や、これからの生活のあり方を考えてみたくなった。

 また国民の多くが東日本大震災の復興を願っている。しかし、がれき処理になると、多くの県が処理を引き受けない、あるいは引き受けを拒否する人がいる。
 対岸の火事なら、可哀そうにと同情するが、いざ火の粉が自分に降りかかるとなると、態度は急変する。
 原発の地元民も原発事故は恐ろしいと思うが、ほとんどの地元民が原発関係の仕事に従事しているとなると、反対はできないのが実情だ。明日の幸せよりも今日の「ごはん」が大切なのである。
 それは地元民がわるいのではない。政府が原発廃炉の後の地元の在り方、産業の在り方、過疎地の財政のありかたと展望をしっかりしないからである。
 
 国民の幸福よりも産業をとった戦後の国の在り方、政治の姿勢が今、問われているのだ。
 かつて戦争反対と言えなかったばかりに戦争に突入して敗北し、原爆を落とされたわが国が、今また原発事故にあっても、まだ原発安全神話に乗り、原発再稼働する愚かなことをしてはいけない。

 「ノー」と言えずに戦争に突入した愚を再び犯さないためにも、今こそ「原発ノー」といおうではないか。
 ただし、原発に代わる代替エネルギーを国民の身の丈に合ったものを考え出すことが必須である。

 地熱、揚水発電風力発電、製鉄所からでる熱エネルギーの利用、などありとあらゆる知恵を絞って代替エネルギーの確保をしようではないか。

 それを実施し、自力で島のエネルギーを自分たちだけで作った島民がいる。

風の島へようこそ (福音館の科学シリーズ)
アラン・ドラモンド
福音館書店
 わたしたちはこれまで、化石燃料と呼ばれる石炭や石油を燃やしてエネルギーを利用してきた。しかし、その化石燃料はそのうち枯渇する。また、石炭や石油を燃やすことで地球温暖化の原因となる二酸化炭素が大量に出る。そして原発から出る放射性廃棄物の処理場がどこにもない問題が世界中で取りざたされ、真剣に議論がなされるようになった。

「それではいくらつかってもなくならない自前のエネルギーを持とう」と言い出した人がいる。
 それが絵本の主人公、ソーレ・ハーマンセン氏の提案から始まったのである。
この絵本の舞台であるデンマークのサムス(サムソ)島は、首都コペンハーゲンから西に100キロほどのところにある人口約4000人、面積は沖縄本島の10分の1という小さな島だ。
 たえず海風がふく、この島で自分たちがつかうエネルギーを自分たちで作り出す計画がはじまった。
 石油や石炭や原子力にたよらず、くりかえしつかえる自然のエネルギーをいかしてくらす。
そんな夢の実現を島民全員でなしとげた実話にもとづく風の島の物語だ。

 自分たちの力で、自分のできる方法で自然のエネルギー(風力や、太陽、麦わらを燃やす、菜種油)を利用して、電気を生み出し、エネルギーをつくりだすことに成功した島民の物語が楽しく読みすすむことができる。エネルギーを生み出すばかりでなく、それを分け合ったり、節約する事も大切なことである。
 地球上、風の強いところもあれば、太陽が豊かなところもある、暑さが厳しいところや、寒いところもある。それぞれの国、地域で、どんな自然エネルギーを利用するのが一番良いのか、未来のためにみんなで考えていかなければならない問題だとこの絵本を読みあらためて考えさせられた。
 この絵本から、大人も、子供も、一家で、クラスで、学校で、友達と地域の仲間と、お隣さんと、話し合う機会を作りたいものだ。

(アラン・ドラモンド作 まつむらゆりこ訳)福音館書店