「猟奇歌」とあるように非日常性の色濃い歌が紡がれている。
「猟奇歌」は探偵誌『猟奇』に掲載された夢野久作の短歌作品の総称である。
この歌が作られたのは1920年から1930年ごろである。
大恐慌時代。
戦後の大不況の頃。失業者があふれ、農村では「娘の身売り」があったころのこと。
現代のこの不景気には、働き盛りの人が職にあぶれて、その日の暮らしにも困っている状態。
まるで夢野久作がこの歌を作った時代と似ている。
紙の上にインクを落とし、それを2つ折りにして広げることにより作成された
ほぼ左右対称の図版を持つロールシャッハテストなるものがある。
このテストにでてくる紙の上にインクをたらしたような
おどろおどろした歌に心臓が蝶の羽根のようにばたばたとゆれて動いた。
その中の何首か紹介しよう。
・わるいもの見たと思うて立ち帰る 彼女の室のむしられた蝶
・古着屋に女の着物が並んでゐる売った女の心が並んでゐる
・わが胸に邪悪の森あり 時折に啄木鳥の来てたゝきやまずも
さてさて、こんな夢野久作の短歌をあなたはどう読むだろうか?