久しぶりに『オール読物』(永久保存版 創刊八十周年記念特大号)を買った。追悼井上ひさし も読みたかったし、八十周年特別企画「私がであった作家(四十人が綴る四十人の作家たち)が面白そうだったからだ。
なるほど「永久保存版」とキャッチコピーにあるように人気作家が豪華競演して健筆を振るっている。
その中で向田邦子の思い出を語っている部分が「さすが向田邦子」と向田邦子ファンを自称する私を嬉しがらせる逸話があった。
「オール読物」歴代編集長がふりかえると題した座談会で鈴木琢二、安藤満、豊田健次たちの座談の中で語られた向田邦子の逸話:
安藤の話:
澤地久枝と向田邦子の対談で二人とも独り身。うちへ帰ったら一人暮らしなのだけれども、ちゃんとテーブルに箸置きを置いて、ご飯を食べている。ひとりなんだから楽をしようと思ったら、箸置きも何もいらない。でもそのルールを破ったらどこまでもルーズになっちゃう。だから自分自身の支えとして必ず箸置きを置いているのだそうだ。
僕、偉いもんだなあと思ってね。
鈴木:
いいお話ですね。それは。
安藤:
このひとたちがしっかりとした作品を書く秘密はこういうところにあるかと感心した覚えがありますよ。
本当にいい話である。向田邦子の魅力は実はこんな隠れた日常にあったと私はひどく感心してしまったのである。ここだけ読んだだけでもこの本を買った価値はあった。
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/04/22
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