飛翔

日々の随想です

料理上手の台所

今日は久しぶりに気温があがって暖かい一日となったが、時々小雨の降る天気だった。各地の桜はどうだろうか?
 四月一日。新年度のはじまりだ。もうぎっちりと予定が6月まで詰まっている。
 今月はさまざまなジャンルの方々とお目にかかる機会がある。翻訳家、エッセイスト、歌人、文芸評論家など。今から胸をときめかせている。特に評論の分野については詳しくないのでどんな話が展開するのか楽しみだ。新年度になり、私も心新たにじっくりと勉学にいそしみたいところだが、家事や料理もしっかりやれよと家族から檄が飛んだ。料理上手なTさんにお料理を習いたいところだ。
 そこで今日は台所を丁寧に磨くことにしたが、この台所、さまざまな台所があるのだろうと、台所紹介の本をひもといてみた。『料理上手の台所』と題した素敵な本を紹介しよう。

 21人の台所を紹介した本.
どの台所もよく使い込まれた道具や自分でリフォームした扉や棚など工夫がこらされており、
こだわりと共に使い勝手のよさが際立っている。


先ず小さな台所の持ち主、塩山奈央さんの台所;
木造アパートの流しとコンロだけの台所では驚くほどの工夫が凝らされていて驚く。
それは頭の上にも手元にも棚をとりつけ、ぶらさげられている。
壁には2本の細いポールと木の枝を上下に渡してあって、
お玉、計量カップ、ニンニク入りの小ざる、思いつく限りの軽い調理道具がぶら下がっている。
 狭い台所を嘆く人は多いけれど、この台所の使い方を見ると反省させられる。
つまり自分が必要とすることは何でも工夫すること。
小さなスペースをいかにやりくりするか。そこがその台所の持ち主の知恵なのである。
自分サイズの暮らし。それをいかに工夫し楽しむか。
その生きる知恵をこの台所から学んだ。


次に紹介するのはホルトハウス房子さん。
彼女の料理をどれだけ参考に作ったか知れない。
その台所はフランスの鍋や北欧の台所道具が一杯。
しかしお鍋を見て驚いた。
目の玉飛び出るほど高い「ル・クルーゼ」の小鍋は
何十年と使い込まれてほうろうの底ははげて鋳鉄がみえているほど使い込まれている。
ホルトハウスさん曰く:
「素性のいいものには、いつしか年輪みたいなものがつくんでしょうね。なじんで、独自の、よそゆきじゃない美しさが生まれてくる。するとまた捨てられなくて」と。
 また台所製品を買うときのポイントをこういう。
「台所のものを買うときはいつも思い切ってきたわね。ちょっといいわぐらいじゃ買わない。質はどうか、使い勝手はどうか、しまう場所も考えて、置いて綺麗かどうかも。


 理研究科の渡辺有子さんの台所の場合:
 どこもかしこもぴかぴか。
食器を洗うのとおなじように、換気扇やガス台の五徳も、毎日掃除。
「まとめて大掃除するほうが面倒。だから「常ぶき」する「食べた後の食器を洗うのと同じ感覚なんです」とのこと。


おー!私もガス台の五徳まで洗うけれど、換気扇までは毎日そうじしてませ〜ん!
ほかにたくさんの台所があり、工夫があり、それぞれのこだわりがあって、参考になることばかり。


 みんな共通することは自分の使いやすさ、使い勝手のよいように工夫されていて、
そこにはよそゆきじゃない自分だけの「台所の美」が生まれていることだ。


 モデルハウスのシステムキッチンは美しいけれど
そこには生活がひとつも感じられず料理のにおいがないただの場所でしかない。


 寒い夜、心づくしの一杯のスープにほっと心も体も温まった経験は誰にもあるだろう。
そんなあたたかさは台所から生まれるのだ。
「台所」にはその台所の主の年輪と愛情と知恵が詰まっている。
 そんな「台所」を紹介してくれた素敵な本だった。