飛翔

日々の随想です

おせち料理今昔


スーパーの店頭はクリスマスとお正月が一挙にやってきた風情だ。
 クリスマスケーキの売れ残りを出すまいと声をからして売る店員。その隣で田作りや数の子を売っており、しめ飾りがもう山のように積まれている。
 ズワイガニのあんよが二三本で2400円なり。お刺身の盛り合わせ、いつ作ったのかわからないようなオードブルの皿にはから揚げやハムやチーズや春巻きなど。
 みているだけでお腹がいっぱいになってクリスマスとお正月は通り過ぎていくようだ。お節のお重の予約が売り出されていた。二段がさね三段重ねは数万円。
 子供のころはおせち料理を作る母は紅白歌合戦が始まってもまだ作っていた。丁寧に大きな寸胴鍋に昆布と鰹節で濃い目にひいたおだしをとり、そのおだしで筑前煮をつくり、くわいを煮て、八つ頭は甘辛く煮、昆布巻きを作り、田作りを炒って、海老の鬼柄焼きを作っていた。紅白なますには柚子を散らし、と一家の主婦は朝から夜遅くまでお節料理作りで腰がぬけるほど働いたものだ。紅白が終わる頃やっと台所仕事を終えた母が炬燵に足を入れる。手も足もすっかり冷え切って疲れた体を温める。
 お正月は来ないほうがいいなあと思ったものだ。
 今おせち料理を数万円、数十万円で買う人を見て世の中は確かに変わったと思う。専業主婦でなく働く主婦はおせち料理を作る時間がないのだ。
 おせち料理を数十万円もだして買うぐらいなら温泉地でもいってゆっくり足腰伸ばして一年の疲れを取ったほうが良さそうだ。
 母にお正月のおせち料理つくりから解放させて温泉旅行でもプレゼントしてあげればよかったと今は亡き母を想う。
 母は喜んだだろうか?