飛翔

日々の随想です

言葉の常備薬

本書は滅法(めっぽう)おもしろい本である。
と「ナニゲニ」書いたけれど、「滅法」の語源はなんだろうか?著者はこんな私をあざ笑うように次のように言う。「シロートが一時間考え込むより、一分かけて辞書を引いた方が確実に言葉の正しい意味と用法がわかる」と。まさに名言。
それに「ナニゲニ」などと今風な若者言葉を使うとはもってのほか、とお叱りが飛ぶかとおもいきや、著者はこんな流行語にも興味深いテーマをみつけてしまうのだ。言葉の語源もロシア語、英語、中国語、韓国語などを引きつつ縦横無尽に言葉の薬箱を広げてみせてくれる。
さて、前がきが長くなったが、ここでクイズ。
クイズ1:「餃子」は何語?中国語?中国語では「チヤオズ」と読む。
そこでいよいよ辞書の出番。『広辞苑』では「チャオズの訛」とあるが「ぎょうーざ」とはほど遠い。
三省堂新明解国語辞典』では「チャオズ山東語」とある。そこから先、著者は『語源の快楽』なる本をひもとく。正解は本書を読んでのお楽しみ。
クイズ2:旧制一高の寮歌「嗚呼玉杯に花うけて」の玉杯に花を受けるのは誰?
この寮歌の意味ってそんなことだったの? 驚き、桃の木、山椒の木である。
クイズ3:かかしはなぜ山田の中に立っているの?
その他:「おまえの母ちゃんデベソ」の本当の意味は?

などなど…目からコンタクトが・・じゃなくて鱗が落ちてくるような言葉、表現、語源に満ちている。しかし知らないのは私ばかりではない。
【まえがき】で著者は某新聞社のコラムのとんでもない間違いとトンデモ説、珍論を指摘し、コラムニストのでたらめぶりに痛烈なパンチを食らわすのである。
面白く為になるばかりではない。「存在と無」という哲学的命題に漫画の擬音語「しーん」と一コマ漫画のみでそれを表現できることに光りをあてるあたりは著者の深い一面を見る思いだった。
快刀乱麻。面白く、切り口鮮やか、ピリ辛味のする本である。料理に香辛料はかかせない。本書は言葉にこだわり、これを愛す人にはなくてはならぬサプリメント、まさに「常備薬」となる本である。この常備薬、服用すればするほど効き目あり。