飛翔

日々の随想です

菫ほどな 小さき人に生まれたし


 
 菫(スミレ)が咲く季節になった。
スミレで思い出すのがあの漱石の句。

 ・菫ほどな 小さき人に生まれたし(明治30年)漱石

 小さな存在だけれど懸命に咲くスミレほど愛らしいものはない。
 漱石はあれほど才能があったけれど、小説家としてスタートしたのは37歳のとき。そして49歳で亡くなった。
 東大を首席で卒業し、イギリスに留学し、大学講師をしたけれど、どれも自分がなりたいものではなく呻吟する。
 37歳でやっと小説家になった漱石。悩み多き人生だったのだろう。
 目立たなくても良い、ひっそりと自分の力を尽くす人生でありたいと思ったのだろうか。
 さて、この漱石は英文学の教授であった。
 こんなエピソードが:
 "I love you."を学生に和訳させた。
 「汝(なんじ)を愛す」などとぶっきらぼうに真っ正直に学生は訳したのではないだろうか?
 そこで漱石曰く:
 「日本人はそういう無粋なことは言わないものだ。日本語では"I love you."は『星がとってもきれいだね』と訳すのだ」
と教えたそうです(笑)。
 おお!なんと粋なことでしょう。