飛翔

日々の随想です

詩歌に寄せるエッセイ

ねがはくは花の下にて春死なん

二尊院へ入ると、入り口近くに西行法師の碑があった。 西行は桜ばかと呼ばれるほど桜の歌を多く作った人である。 花は桜木。人は武士。良くも悪くもぱっと咲いてぱっと散る無常観は日本人の心の底流にながれるものなのだろうか。 春のこの時期、心軽やかに浮…

うす紅色の迷い

髪をかきあげるとさらさらと指の間から髪がこぼれおちる。 黒髪を櫛けづる姿は絵になる。 さらに長い髪を口にくわえたピンで留めて結いあげる姿はなんともなまめかしく美しい。 女が女であると意識するときは薄物をはおるときではなかろうか。 肌がすけてみ…

菫ほどな 小さき人に生まれたし

菫(スミレ)が咲く季節になった。 スミレで思い出すのがあの漱石の句。 ・菫ほどな 小さき人に生まれたし(明治30年)漱石 これはどうとればよいのだろうか? 道にひっそりと咲く小さな菫。 小さな存在だけれど懸命に咲くスミレほど愛らしいものはない。 …

楽しみは・・。

9,11.3,11とテロと災害が起き、福島第一原発事故が起きた。 そして、今、世界中にコロナが感染拡大しパンデミック状態 朝、一緒にご飯を食べ「行ってまいります」といった家族がもう夜には帰らぬ人になってしまう。そんな悲しいことが悪夢でなく、実際に起き…

落ち椿

わが家の庭には「侘び助」椿が咲いている。侘び助の色は白。 しかし赤い椿に接木したのか根元から親木である赤い椿も咲いている。 つまり一本の椿の木に赤と白の椿が咲いているというなかなか味わいある風情をかもしているのだ。 玄関の前には赤いやぶ椿が咲…

おみやげ

外へ一歩でて「わ!寒っ」と震えて思うことは? 「寒いから冬は嫌いだわ」と寒がりの私は先ず思う。 夫は一歩外へ出たとたん「わ!やっと冬らしくなったなあ」「顔にあたる風が気持ちいいね、身が引きしきしまって僕は好きだなあ」と云い、 震えている私に「…

水仙

2011年 イタリア、ポンペイのレモン農園の隣にて撮影 今日は気温が14.度もあった。 温かな一日となり、やっと春を思うThe Daffodild William Wordsworth I wander'd lonely as a cloud That floats on high o'er vales and hills, When all at once I saw a …

松村由利子の歌に寄せる「女性性」

2008年『短歌研究』3月号を読んでの感想である。 その中で松村由利子の短歌30首を興味深く読んだ。「月と女」というテーマの30首。 さて「月」というと風流に夜空の「月」を思いかべる。では「女」というと何が浮かぶだろうか? 男性になく女性性に特有の…

「好文木」

梅は桜のようにはなやかではない。 けれどその気品に満ちた風情と馥郁(ふくいく)とした香りがあたりを静謐にする。 梅といえば江戸の俳人宝井其角の句にこんなのがある。・梅が香や隣は荻生惣右衛門 其角は日本橋茅場町で荻生惣衛門(おぎゅうそうえもん)…

寝顔が汚れるって?

起床時間になって夫をおこそうとして顔を見た。 寝顔があまりにも子どものようだったのでしばらくながめていた。布団からでた手がばんざいをしているようだった。 仕事がきつくて「もう僕お手上げです」とでも言っているのだろうか?それともなにか良い夢で…

初雪

気候温暖な当地にも初雪が降った。 江戸時代の歌人・橘曙覧(たちばなのあけみ)は初雪をこんな風に詠っている。 初雪うつくしく ふれる初雪 ことの葉の 跡つけつくる やすらはれけり (『橘曙覧全歌集』 (岩波文庫)より) 初雪の美しさは何とたとえたらよい…

くらし

今日は学校があった日。来年の学校新聞の写真撮影があるからというので、少しおしゃれをしていったら、次週に延期になった。 もうお洒落はしないぞ!おまけにプレゼンテーションしようと思ったら、学校長の見学があったので、緊張した。 しかし、転んでもた…

松村由利子の歌に励まされて

高校のクラス会へ行くと皆それなりにたっぷりと「豊かさが増して」人間としての魅力が備わってきたなあと感心したり驚いたり(?)。 高校時代はまさかこれからの人生が山あり谷ありだなどと誰も想像だにしないものである。 そんな高校時代の友人が結婚して…

良き妻がいるらしき匂い

電車に乗ると、前の席にいる人たちの顔や風体を観察するのがくせになった。 松村由利子さんの歌に含蓄深く面白い歌がある: よき妻がいるらしき匂い芬々(ふんぷん)と黒光りする靴の男ら (第一歌集『薄荷色の朝に』短歌研究社より) この歌では黒光りする靴…

雪と笠と言葉

雪のニュースが舞っている。 中国の詩人玉屑(ぎょくせつ)の詩の一節に「笠重呉天雪 鞋香楚地花」(笠ハ重シ呉天ノ雪 鞋ハ香シ楚地ノ花)=(かさはおもしごてんのゆき くつはかんばしそちのはな)というのがある。 「呉天」とは「呉国の空」で、「(都から)遠い…

11月ももう終盤になってきた。紅葉狩りに出かける人も多いことだろう。 この紅葉もあっというまに散ってしまう。その散ってしまうまでの限りあるの美を愛でてやろうとする心が美しい。 紅葉はかぎり知られず散り来ればわがおもひ梢(うれ)のごとく維(ほ…

祇王にあいたくて

今日で十月も終わり。 十月の終わりを飾る今日は快晴。 昨日の雨も上がり、空気は澄んでお日様は燦々と部屋の中に差し込んで身も心も温めてくれている。庭のハナミズキには真っ赤な実がつき、小鳥がついばみにくる。葉は紅葉している。 布団が干された庭はな…

人に似て猿も手を組む秋の風

季節や気温と云うものは人間の行動や感情に微妙な風情を喚起するもののようだ。 だんだん涼しくなって秋も深まる頃になると、もの思いにふけったりする。 思索にふけるとき、懐手(ふところで)をしたり、無意識に手を組んだりするものだ。 そんな様子を元禄…

さがしにゆく

さがしにゆくさがしにゆく 絵の中から 絵の外へ まっすぐのびていた道を 峠の向こうがわへ とばした風船を(詩集『いそがなくてもいいんだよ』岸田衿子 童話屋より)いそがなくてもいいんだよ作者: 岸田衿子出版社/メーカー: 童話屋発売日: 1995/10/01メディ…

停車場

子どもと云うものは親がどんなに邪険にしても慕うものなのだろうか。 テレビの番組で嬰児の頃に育てられないからと言ってわが子を捨てた母を大人になった子どもが探す番組をやっていた。育ての親がどんなに親身になって実の親よりも愛情をこめて育てても、成…

カシニョールの絵の中の女

「天高く馬肥ゆる秋」などと言うけれど、馬だけでなくこの私めも肥ゆる秋になった。何を食べてもおいしくて困る。朝、食欲がないということが今までの人生で一度もない。 これは人様には言わないほうがよろしいことのようだ。 なにしろ「美女」というものは…

良夜

朝晩めっきり涼しくなった。 秋は夕暮れ。夕日はなやかにさして山ぎはいと近くなりたるに、烏のねどころへ行くとて、三つ四つ二つなど、飛びゆくさへあはれなり。まして雁などのつらねたるが、いと小さくみゆる、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音な…

旅の衣は鈴懸の

旅というと有名な謡 ♪「旅の衣はすずかけの、露けき袖やしほるらん・・」が頭に浮かぶ。 能「安宅(あたか)」のなかの謡である。歌舞伎十八番のひとつ「勧進帳」は、この能「安宅」を元にしてつくられたもの。 「長唄」 旅の衣はすずかけの、露けき袖やしほ…

白露

めっきり涼しくなったと喜んでいたら、今日は夏に逆戻り。 昨日は中秋の名月。白露というのがある。白露とは 白露とは二十四節気の1つ。 秋の気配が濃くなり野草に白露が宿る頃。 (今年は9月8日から秋分の頃まで) つまりちょうど今頃の時期。 このわびし…

中秋の名月

今日は「中秋の名月」。 外へ出てお月見してみましょう。 中秋とは旧暦の秋(7月、8月、9月)の真ん中の"日"を指す言葉で旧暦8月15日のことです。 中秋の名月にはお月見だんごをこしらえる。 花よりだんごではなく、おだんごをお月様にお供えして名月を愛で…

たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどい頭(かしら)ならべて物をくふ時

9,11.3,11とテロと災害が起き、今また台風豪雨による土砂災害が起きた。 朝、一緒にご飯を食べ「行ってまいります」といった家族がもう夜には帰らぬ人になってしまう。そんな悲しいことが悪夢でなく、実際に起きていると、今をいかに大切に生きるかを問われ…

一番ハンサムな季節は何?

朝晩涼しくなったかと思うと日中暑くなったりで体温の調節が難しい。 こんなとき風邪をひきやすいので皆様ご注意を。愛さないの、愛せないの (ハルキ文庫)寺山 修司角川春樹事務所 寺山修司の詩「季節館」からだれか 季節を見た人がいたら教えてください 季…

ニイニイ蝉カアブラ蝉か

我が家の庭に父祖のように一本で森を作っているケヤキの木。 その樹皮につかまっている無数の蝉がこれ。↓ じんましんができそう!! ジャージャーと炒りつくような蝉の声(ろこ) これがジージーと朝から鳴いてうるさい。テレビの音も、話し声も聞こえないほ…

原爆投下と原発事故

八月六日の今日。広島原爆投下から66年が過ぎました。 世界で唯一の原爆被爆国のわが国で、原子力発電が推進され、地震列島のわが国に原発が多数建設された。 そして福島第一原発の爆発により、広島原爆二十個分の放射能が漏出されたといわれている。いま…

友を選ばば書を読みて

友達と云うのは本当にいいものだ。 不実で有言不実行の人もいるなか、ここぞというとき、すっくと立ち上がり、援護射撃してくれる強い味方。それこそが友だちである。ベクトルが同じ仲間は楽しい。愉快である。 憂き世のしがらみなんぞにしばられず、誠の言…