女が女であると意識する時は薄物をはおるときではなかろうか。
肌がすけてみえる瞬間、えもいわれぬ美がかもしだされる。そしてそれを脱ぐときはさらになまめく。
そんな女のナルシズムを歌ったのは松平盟子である。
・ランジェリーすべりおちゆくたまゆらのうすべにいろの迷い愉しむ
(『たまゆら草紙』河出書房新社)
素肌からするりとすべるようにぬげていくランジェリーの瞬間を歌っていて微妙なエロティシズムがこぼれるようだ。
ランジェリーがぬげていく先にあるものは何だろうかと想像が宙を飛ぶ。
それを「うすべにいろの」「迷い」とし、それを「愉しむ」とはまったく憎い大人の女が匂い立つ。
なにやら謎めいて秘めやか。女というものは着るもの一つ、それが寝巻きであり、ランジェリーで「女」に生まれた幸せを想い、なまめかしく「愉しむ」感性の持ち主であることがわかろうというものだ。
男はまさかパジャマを着る喜びなんぞはかんじないだろうし、パンツやステテコの歌をなまめかしく歌うこともないだろう。