・すゞしさや月ひるがへすぬり団扇(うちわ) 祐甫
この句は元禄時代のもの。「ぬり団扇(うちわ)」というのがミソ。
月の光が漆(うるし)が塗られた団扇(うちわ)の表面に射しかかるようすはなんとも風流で涼しげです。しかも、うちわをあおぐたびに月の光もひるがえる様子を詠んだもの。
現代では暑い夏の宵を外で涼をもとめようなどと思う人は少ないでしょう。まして月光をあびるということも。
街のネオンがまぶしく、街灯がともる夜は月の光はかききえてしまう。
エアコンがあるので団扇を持つ必要もない。
さすれば、かのような句の風流さなど生まれない。
文明は「雅」(みやび)に目くらませをくわす。
風物と云うものは時代とともに移り行くさだめか。