季節や気温と云うものは人間の行動や感情に微妙な風情を喚起するもののようだ。
だんだん涼しくなって秋も深まる頃になると、もの思いにふけったりする。
思索にふけるとき、懐手(ふところで)をしたり、無意識に手を組んだりするものだ。
そんな様子を元禄の俳人はこんな風に詠んだ。
人に似て猿も手を組む秋の風 珍碩(ちんせき)
ただわびしげな風景をそのまま詠むよりも、猿が手を組むというように擬人化すると猿でさえも思索にふける秋の情緒が濃厚にでるというものだ。
猿を登場させたのは、たまたまなのか、あるいはふと猿の様子をみていて思いついたのか、はたまた技巧的にこうしてみてはどうだろうかと思って詠んだのか?
いずれにせよ「猿も手を組む秋の風」とはうまいものだ。