飛翔

日々の随想です

書評

ディナモ―ナチスに消されたフットボーラー

ウクライナ(首都キエフ)にロシアが介入(侵略)しようとして世界の目が注がれている。 ナチスが台頭した時代もこの地は餌食になった。その時代のサッカーに関するノンフィクションを紹介しよう。ディナモ―ナチスに消されたフットボーラーアンディ ドゥーガ…

Holes

Holesクリエーター情報なしYearling 英語から遠ざかっていた人や洋書の初心者には辞書なしで楽しく読める本です。 非行少年の更正施設での物語。非行少年の人格形成を目的と称して炎天下で1日中荒地に穴を掘るという過酷な仕事をさせるというなんとも非人道…

『爪と目』

爪と目作者:藤野 可織Shinchosha/Tsai Fong BooksAmazon 第149回芥川賞受賞作品の書評です。 「わたしは三歳の女の子だった」と唐突に登場する「わたし」。 父の愛人であり、母のミステリアスな死により義母になった「あなた」を見つめる「わたし」の目から…

書痴

小説や詩、短歌を読むのは好きであるけれど、随筆を読む楽しさは格別なものがある。 特に書物随筆は楽しくて読書子にとっては読まないで通り過ぎることができないものである。 先ず「書物に関する雄」は森銑三と柴田宵曲著『書物』(岩波書店)をあげたい。…

『戦争絶滅へ、人間復活へ――93歳・ジャーナリストの発言』

むのたけじ氏の話を黒岩比佐子さんが聞き手になってまとめた『戦争絶滅へ、人間復活へ――93歳・ジャーナリストの発言』(岩波新書)の5刷が決定したとのこと。5刷ということはそれだけ多くの読者の要望が強いことを表わしている。68回目の敗戦記念日の今日。…

『本の魔法』

本の魔法作者:司 修白水社Amazon 第38回大佛次郎賞受賞作品である。 著者の司修は、戦後を代表する文学作品の装画・装幀を手がけてきた画家であり川端康成文学賞、毎日芸術賞を受賞した作家である。本書は著者が、手がけた装幀にまつわる文学者との交流を…

岬作者:中上 健次文藝春秋Amazon芥川賞受賞作品である。 1976年出版初版本。装幀は司修。黒いシルクスクリーン版画の装幀である。 表紙の装幀がこの本を暗示するかのように暗い血の匂いがする作品だ。 「黄金比の朝」「火宅」「浄徳寺ツアー」「岬」が収めれ…

山で一泊―辻まこと画文集

山で一泊―辻まこと画文集辻まこと創文社 幻の逸品と言われていた「辻まこと」の画文集を手に入れた。 題字も挿画もすべて辻まことのもの。 月夜の晩、山中にいる犬と男の絵は「あとがき」にある文の絵だろう。 青い色の濃淡と白い月。 山中にえりを立てて座…

ひとりの女性に届いた四〇〇通の恋文

日本人の多くは照れしょう。 でも一年で特別の日に思い切って愛する家族に、愛する人に手紙を出してみるのも悪くはないだろう。 それもできない人は↓の本を贈ってみてください。 そしてしおりがわりにひと言メッセージを本の間にいれてプレゼントしてみては…

101歳の詩人 柴田トヨさんを偲んで

98歳で発表した初の詩集「くじけないで」がベストセラーになった詩人の柴田トヨ(しばた・とよ)さんが20日午前0時50分、老衰のため宇都宮市の老人ホームで死去した。101歳。栃木県出身。自宅は宇都宮市。葬儀・告別式は24日午前10時から宇都…

マキャベリ語録

マキアヴェッリ語録作者:塩野 七生新潮社Amazon 時代を超える指導者論。 マキャヴェッリの思想の抜粋。政治とは永田町界隈で繰り広げられるものでなく、持てる力をいかにすれば公正に、かつまた効率よく活用できるかの「技」ではないかと塩野氏は語る。 本書…

壊れた脳 生存する知

壊れた脳 生存する知山田 規畝子講談社 著者は整形外科医の女医さんであるが、医大2年生生の時に「一過性脳虚血発作」という軽い脳梗塞になり、医大6年生のときに「もやもや病」による脳出血、34歳で脳出血と脳梗塞、37歳の時脳出血と通算4度の脳卒中…

あなたのために いのちを支えるスープ

じっくりと、ことこととお鍋が台所で湯気を立てている。 幸せを絵にするならばそんな風景ではないだろうか? そんな台所からうまれた滋味豊かな本を紹介しよう。 『いのちを支えるスープ』 いまや著者の辰巳 芳子さんはテレビでもひっぱりだこ。 料理教室に…

とっておきの英語

とっておきの英語―第一線同時通訳者の秘蔵話村松 増美毎日新聞社 今は亡き米原万理さんはロシア語の通訳でもあり、作家でもある才人でした。 そこで今日は米原万理さんより少し先輩で、同時通訳の第一人者である村松増美氏の著書から歴史をいろどった名セリ…

一条の光・天井から降る哀しい音

厳しい親、優しい親、だめ親父など、親でもさまざまな顔がある。親の背中を見ながら子は育つ。 育って成人して自分も親になる。 親になって初めて親の苦労がわかったりする。 「両親はえらかったのだなあ」としみじみ思い、親孝行せねば・・・と思っているう…

ひっつき虫

ひっつき虫杉本 秀太郎青草書房このアイテムの詳細を見る いつだったかこの著者の杉本秀太郎さんの京都の自宅がテレビに映し出されていたのを見たことがあった。京の町やの風情が残る素晴らしいお宅だったが、そこでの暮らしぶりにも目を見張った。 京都、綾…

父のこと母のこと

父のこと 母のことクリエーター情報なし岩波書店 父や母を思うとき、そこには家族の歴史があり、生活があり、時代が映し出される。子の視点からとらえた父や母の姿を描いたものが本書である。 日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した歴代の作品の中から「父と…

英文『若草物語』の続編/Good-Wives

夏休みに入った生徒諸君にぜひこの夏チャレンジして欲しい簡単な英語読本を紹介します。Good Wives: Beginner (Macmillan Readers)クリエーター情報なしMacmillan Education オルコットの名作『若草物語』の続編です。 四姉妹がそれぞれ大きくなって、メグは…

人生を豊かにする日本語

人生を豊かにする日本語谷沢 永一幻冬舎 暑い夏、この一冊で頭の中のもやっとした暑気を晴らしてください。 「酢豆腐」「多岐亡羊」「汗牛充棟」 さて意味は如何に? ことわざ、言葉の妙、を「言葉の達人」谷沢氏が読み解いていくのが本書。世にあまたある「…

セミ論争

我が家の庭に父祖のように一本で森を作っているケヤキがある。。 その樹皮につかまっている無数の蝉。 テレビの音も、話し声も聞こえないほど。 テレビは雨戸を閉めてみている。 閑さや岩にしみ入蝉の声(芭蕉) この句とはまるで縁がない我が家の蝉たち。 …

セピア色の昭和

セピア色の昭和――記憶の断章本間 千枝子岩波書店 随筆の魅力は作り物(虚構)にはない著者の体温が感じられるところだ。 本書は題名のように昭和一ケタ生まれの著者が経てきた「昭和」の出来事のエッセイ集である。その生い立ちからユニークで、実の両親と育…

くじけないで

人には苦しくてどうしようもないときがある。そんなとき、たった一言が支えとなってつえとなってくれる。今日は九十歳を越えたとき、詩を書くようになったという現在99歳の柴田トヨさんの詩集を紹介しようと思う。くじけないで柴田 トヨ飛鳥新社このアイテ…

ジョイスを読む

6月16日はアイルランドでは「ブルームズ・デイ」となっている。 「ブルームズ・デイ」とは、ジェームズ・ジョイス(James Joyce:1882-1941)の『ユリシーズ』”Ulysses”(1922)という小説にちなんでいる。 この小説では1904年6月16日のダブリンでの出来事を描…

父の帽子

父の帽子 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)森 茉莉講談社 森鴎外は二十七歳で結婚。長男於菟を得た後、離婚。十一年後に鴎外が「美術品の如き」と評した美女、志けと再婚。 本書は長女茉莉が父鴎外との日常を中心に自らの半生を綴った回想記であり、日本…

沖縄返還40年目と『戦争絶滅へ、人間復活へ』

今日は沖縄返還40年目の日である。 1972年五月十五日、戦後、米軍による統治が続いていた沖縄の施政権は日本に返還された。以来四十年。沖縄は本当に日本に復帰したのだろうか? 沖縄返還の基本方針は「核抜き本土並み」だ。 核抜きとは、沖縄に配備されてい…

ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間

ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間 (ノンフィクション・隣人たちの哲学)菅谷 昭ポプラ社 東日本大地震は未曾有の被害をもたらし、さらに福島第一原発事故による放射能汚染処理がいまだに先行きが見通せず続いている。放射能は目に見えず、匂いもしな…

I'd Really Like to Eat a Child

I'd Really Like to Eat a Childクリエーター情報なしDragonfly Books 頭を柔軟にしたいときは童話や絵本を読むと、しぜんと頬がゆるむ。 今日はそんな絵本を読んだ。 英語の絵本である。幼児が読むのにわかりやすいように書かれてあることから、英語に親し…

77歳のおばあちゃまの英語留学記

七十七歳 カナダ英語留学日記―たくさんの出会いに支えられて岡崎 つぎみ川喜多コーポレーション77歳のおばあちゃまの英語留学記。 著者はあの現役医師日野原重明氏に影響され、また96歳の元女医、石田文枝さんの話に頭を「ガ−ン」となぐられたような気に…

前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って

前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って (知恵の森文庫)森下 典子光文社本書は、前世が見えるという女性に取材で出会った作者が、イタリア、ポルトガルまで「前世」の「自分」を検証する旅に出るノンフィクション・ルポルタージュである。 疑り深く、…

風の島へようこそ

風の島へようこそ (福音館の科学シリーズ)アラン・ドラモンド福音館書店 わたしたちはこれまで、化石燃料と呼ばれる石炭や石油を燃やしてエネルギーを利用してきた。しかし、その化石燃料はそのうち枯渇する。また、石炭や石油を燃やすことで地球温暖化の原…