小説や詩、短歌を読むのは好きであるけれど、随筆を読む楽しさは格別なものがある。
特に書物随筆は楽しくて読書子にとっては読まないで通り過ぎることができないものである。
先ず「書物に関する雄」は森銑三と柴田宵曲著『書物』(岩波書店)をあげたい。
この両碩学が書物、読書についての薀蓄(うんちく)を傾けた随筆には「書物への愛」が詰まっていてことあるごとに紐解きたい本の筆頭である。書物 (岩波文庫) 森 銑三,柴田 宵曲 岩波書店
『書斎のポトフ』開高健・谷沢永一・向井敏著(潮出版社)
『残る本・残る人』向井敏(新潮社)書斎のポ・ト・フ (ちくま文庫) 開高 健,向井 敏,谷沢 永一 筑摩書房
、『背たけにあわせて本を読む』向井敏(文藝春秋)残る本 残る人 向井 敏 新潮社 背たけにあわせて本を読む 向井 敏 文藝春秋
風の文庫談義 | |
百目鬼 恭三郎 | |
文藝春秋 |
塩一トンの読書 | |
須賀 敦子 | |
河出書房新社 |
そのほかにもまだあげきれないほど読んできた。これら書物随筆だけでも本棚が埋まってしまうほどである。われながらあきれるほど読んだものだ。
古本の世界でこの人ありといえば、『古本薀蓄』を書いた八木福次郎である。
古本蘊蓄 | |
八木 福次郎 | |
平凡社 |
すごいのは九十三歳を超えても月刊の書物誌『日本古書通信』の現役編集者であったことだ。
この八木さんよりも十歳上の岩佐東一郎が書いた『書痴半代記』(ウエッジ文庫)も圧巻だった。
書痴半代記 (ウェッジ文庫) | |
岩佐 東一郎 | |
ウェッジ |
古書を介した交友や日々の生活からにじむ古書への猛愛ぶりは読書子にとって参考にもなり共感を覚えたり、当時の古書店の様子を知るよすがになって楽しい書物随筆であった。ウエッジ文庫はさすがに良い!
堀口大學の人柄やぼろぼろに擦り切れた辞書を皮で製本しなおして使っている様子を知ることができ、堀口大學が好きな私はますます好感を持った。
どれをとっても本好きにはたまらなく面白いエッセイばかり。
暑いなどと言っている暇はない。読書亡羊である。