小学校の高学年になった頃のことだった。
私は大怪我をおって家に帰ってきたことがあった。母はいきなり私を抱いて胸をはだけて乳をふくませた。
母の膝からはみ出るほど大きななりをして、私は泣きながら母のおっぱいを吸った。
大きな私になぜそんなことをしたのだろう?母というものは理屈や言葉でない何かが備わっているのだ。
一滴も出ない乳だが、見えない乳があふれんばかりに私を満たした。それは今も私を満たし続けている。
母はもうこの世にいないけれど、目には見えない大きなものは私を満たしてくれている。
愛する人を失う悲しみははかりしれないけれど、見えない大きなものは決して失われない。