アメリカのオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞することになった。
ノルウェーのノーベル賞委員会(他のノーベル賞はスウェーデンの委員会が決めるが、平和賞だけはノルウェー国会から選出した5人の委員が決定する)は、授賞理由をこう述べている。いわく、「オバマ氏が国際的な外交と人々の協調を推し進めるため並外れた努力をしている」「オバマ氏は大統領として、国際政治の場に新たな環境を生み出した。多国間外交を再び中心に据え、国連やその他の国際機関の担う役割を重視した」。
ノーベル賞委員会のコメントは更に続く。「核なき世界の構想は、軍縮と軍備管理交渉を力強く推し進めた」「オバマ氏が主導権を握ったことで、米国は世界が直面している深刻な気候変動に対処する上で、より建設的な役割を果たしている」「オバマ氏ほど世界の注目を集め、世界の人々により良い将来への希望を与えた人はほとんどいない」「委員会はオバマ氏の『今こそ地球規模の課題には地球規模で対応し、責任を分かち合うときだ』との訴えを支持する」(いずれも共同電による訳より抜粋)。
世界で唯一の被爆国であるわが国が声の限りに「核をなくそう」と叫んでもとどかなかったことを、原爆を落としたアメリカの大統領が平和賞を受賞とは驚きである。しかも、オバマさんは大統領になったばかり。まだなにもしていない。演説をしただけであるが、その世界的な発信力はすごかったといえよう。
しかし、世界に「核廃絶」を説いたことはすばらしいことである。
今度2020年にオリンピックを広島・長崎で開催しようという動きがでてきた。
声を枯らして核の悲惨さを訴えても届かないのなら、現地を見てから平和の尊さ、原爆の悲惨さを体感してもらいたいものである。
オバマ大統領は先ずは広島・長崎にくるべきである。
前のブログで多田富雄さんの『能の見える風景』藤原書店を紹介したが、
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免疫学者でいて、能への造詣が深い多田氏がこれらの新作能を書いたのは核廃絶である。悲劇を繰り返してはならないという思いがつのったうえでのこと。
中東では劣化ウラン弾がまだ使われ、核軍縮は実現していない。そしてわが国では被爆体験者が高齢となり、語られることが少なくなってきつつある。
悲劇を忘れないため、世界で唯一の被爆国のわれわれが何か形として残さねばならない。
そんな思いがこの新作能にこめられている。
『原爆忌』の主題は鎮魂と哀悼を描き、復活と再生を表したのが『長崎の聖母』である。
被爆体験者が少なくなってきつつある現在、こうした演劇としての能が日本各地で上演され、また、世界に発信して行くようになれば、核廃絶が血となり肉となって世界中に浸透していくに違いない。
多田氏は、能が現代の視線に耐えて生き延びる魅力的、創造的な演劇であることを『能の見える風景』で読者にあますことなく語りつくしている。
広島・長崎を見ずして核廃絶を説いてノーベル平和賞を受賞したオバマさんにも是非この『原爆忌』と『長崎の聖母』を観ていただきたい。
そして広島・長崎にはお子様も連れてぜひ訪れていただきたい。
語り継ぐは若き者へである。