今朝の「とと姉ちゃん」を観ていてしみじみ思ったのは文明の利器は文化や風物を変えるということだ。
平塚雷鳥の家に原稿依頼に行くまりこ。
その部屋のしつらいの素敵なこと!
部屋の欄間(らんま)の意匠(デザイン)が欄間職人のわざの冴えが見えるものだった。
すりガラスを囲むようにデザインを凝らした透かし模様。連続したそれらは一連のリズムを与えている。
そして夏の風が部屋中にいきわたるように、葦(よし)で編んだ夏用の葭戸(よしど)。
上からじざい鉤で吊るされた三日月型の花入れには涼しげな花が活けられ、風に揺れている様子。
それらはみな、日本の家屋に昔からあったものたちだ。
日本の建築の多くは夏をいかに涼しく暮らすかように作られていた。
小さな坪庭には緑があり、つくばいには水が張られ、
つくばいの下には水が流れるたびに琴の音がなるような仕掛けの水琴窟(すいきんくつ)がある。
舟形の花入れが吊るされ、風が吹くたびに花入れが揺れ、一瞬にして湖に浮かぶ一艘の舟のよう。
眼で涼み、水琴窟(すいきんくつ)の音色を耳で聞き、葭戸(よしど)から吹き抜ける一陣の風に涼む知恵。
そこには日本の家屋が持っている夏の風情と文化の粋が満ちている。
日本は亜熱帯か熱帯地域になったかと思うような灼熱の夏になってしまった。
地球温暖化のせいか、地球全体が熱せられ、もう扇風機やうちわで涼を楽しむ時代ではなくなった。
文明の利器が進み、スイッチ一つでポンと冷風が生まれる。
部屋にはもう葭戸は無用となり、涼しげな欄間の出番はない。
水琴窟の音色はエアコンの室外機の音で消されてしまう。
文明の利器は日本から夏らしい風情と、職人の技や文化を奪っていった。
時代は明らかに変わってしまったと「とと姉ちゃん」を見ながら気が付いた。
日本家屋は洋風になり、畳は消え、床の間も消えた。
伝統的な活け花はフラワーアレンジメントに変わり、ブーケになり、茶の湯はすたれてきた。
外国人は日本の田舎の風景に憧れ、日本人はNYの生活にあこがれる。
外国人は武士道や古武道に憧れ、日本人はゲームにうつつをぬかす。
日本の小学生は日本語もおぼつかない頃から英語を習わされる。
国際化が進み、英語は必須と考えられるようになった。
美しい日本語は消えていくのだろうか?
日本文化も?