庭そうじに汗する午前。我が家の父祖のように天空から庭全体を見おろすケヤキが落葉した。
枯葉が地面を敷きつめ、風にあおられてカラカラと音を立てて舞う。
茶室の前のつくばいには、紅梅がある。まだつぼみすらついていないが、梅の風情ほど渋い趣のあるものはない。
・月よみの照りあきらけき地(つち)のうへ紅梅の影とがりて黒し
(岡本かの子)
「紅梅の影とがりて黒し」の鋭い写実が内面を投影していて深い。
せわしない年の瀬。なにげなく眺めていた庭にも四季が訪れ、草木が心を潤してくれていたことに気づく。
葉を落としたケヤキが師走の空に黒々と幹のありかを示していて、まるでエッチングをみるようだ。
生きとし生けるものたちへの畏敬と感謝の気持ちを捧げたい。