飛翔

日々の随想です

雪見障子と雪見だいふく


 真冬の茶室では小ぶりの火鉢が客の前に出される。
 それは本当に小ぶりでひとり分の手だけを温める「手あぶり」と呼ばれる火鉢だ。
 趣向を凝らして織部焼きや、唐津焼きや、様々。

 我が家ではお正月になると黒漆(うるし)の小さな火鉢に白い化粧灰をいれて客に出す。
 真っ黒の漆の外観。中は真っ白な灰。中央には真っ赤におきた炭。美しい日本家屋の風情がそこにある。

 畳の部屋には火鉢が良く似合う。
 昔の人は趣向を凝らして陶器や磁器、漆の火鉢、ひとり分の手あぶりなどを愉しんだ。
 なんとも粋なものだ。

 雪見障子などという粋なものもある。
 部屋にいながら外の雪景色を障子越しにめでる。
 障子の枠が額縁の役割を果たして、それは一幅の日本画のよう。

 日本人の家屋に和室がない家が多くなったという。
 外観もインテリアも、住まい方も欧米化し、畳の部屋や床の間は消えてしまうのだろうか?
 皮肉なことに日本に住む外国人は日本の古民家を改築して日本の古くからの民具や骨董品を集め素敵な暮らし方をしている人が多い。

 日本は国籍不明な欧米風の家に住み、漢字が書けないのに、子どもは小学校から英語を学習し、敬語を正しく使えないまま大人になってしまうのだろうか?
 もしかしたら、雪見大福はしっていても、雪見障子を知らない人のほうが多いかもしれない。