飛翔

日々の随想です

恋は気まぐれ野の小鳥


子供の頃から髪を長く伸ばしたことがない。
小学生のときは刈り上げスタイルのワカメちゃんだった。
早生まれの私はクラスでも5番目にはいるぐらいの成績!じゃなかかった!おちびちゃんだった。母が年をとってから産んだので溺愛され、熱が37度以上あると学校を休まされた。
母の趣味でシンプルでこざっぱりとした服を着せられた。
自分でもボーイッシュな格好が大好きだった。
それにボーイッシュであるほうが、ガーリッシュよりも実は可愛いのである。
顔中、目ばかりというくりくりお目目に好奇心をいっぱい宿らせて大人たちを観察。
母手作りの服は365日とっかえひっかえだった。
なにしろとってもおちびちゃんだったので、ほんのわずかなきれで服が作れるので買うよりも安くて愛らしいものができたお値打ちのコドモ時代だった。
中学になったら突然背が伸びた。
姉二人は165cm以上ですらりとしていた。
久しぶりにあった小学校時代の友達に「あら、大きくなったわねえ」と言われ、さすがの私も自分がクラスのみんなからも「おちびちゃん」という印象が強いことを知るのだった。
さて、再度ボーイッシュの話に戻ると、逆転の発想で、ボーイッシュスタイルはある年齢の女の子にとっては女の子の愛らしさを引き立てるものなのである。
長いまつげに縁取られた目をきらきらさせて、きびきびと活発に動きまわるショートカットの女の子。それは爽やかな少女の愛らしさであり、ガーリッシュスタイルにはかもし出されない魅力なのである。
大人になるとそれはマニッシュという表現に変化する。
子羊の皮をなめした上質の皮の服を着崩して着る。
服が与える心理的なものは大きい。
色もそうである。
 まっ赤な服を選ぶ日はまるでカルメン。ハバネラを歌いながら玄関を出るときはもうすっかり心が昂揚してくる。

♪恋は気まぐれ野の小鳥
 誰も手なづけることなど出来ぬ。
  イヤと言ったら
   何度呼んでも行くものか。

脅しも宥めすかしも無駄。
 あなたが私を嫌いなら、
  私があなたを好きになる。

私に好かれたら、気をつけなさい。
 掴んだと思えば逃げている。
  逃げたと思えば手の中にいる!
   あなたの周りをすばしこく…
    私が惚れたら気をつけなさい。

松村由利子さんの次の短歌を朗誦するとき私は一瞬踊り子になる。

スカートを捌(さば)く踵を打ち鳴らす挑発という花咲かすため

ぬっくりと吾は立つなりスーツ脱ぎ襞たっぷりのファルダを穿けば
(歌集『鳥女』松村由利子本阿弥書店)から)

スカート一枚で女は妖艶なカルメンにもなれば、清純な少女にもなる。
服は身を包むだけでなく心模様も包む綾なもの。
松村由利子さんの次の歌を口づさみながら前こごみになった肩甲骨をきりりとひきしめよう。
指先まで力を込めよ負荷をかけ負荷をかけ人は美しくなる
(歌集『鳥女』松村由利子本阿弥書店)から)