私は料理ブログを読むのが好きだ。
もちろんレシピを参考にするのだけれど、私が好きなブログ主は何回も納得いくまで作って、それをレシピ公開している。
丁寧に神経を行き渡らせて作る料理に添えられた言葉は、母の台所を思わせるものに満ちている。
だから心がさみしかったり、落ち込んでいるとき、その人のブログを訪れる。
ごぼうのきんぴら。うずらまめのこっくり煮。
読みながら涙が出る。
心を込めた料理に温められる。
写真が美しく、世界料理ブログの写真で上位に掲載されたこともある。
お人柄が文章にも料理にも表れている。
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さみしい時、落ち込んだ時、台所に行くと、ふくよかな体に真っ白な割烹着を着た母がいる。
何かがコトコトと煮える音がしたり、まな板からリズミカルな包丁の音が聞こえる。
「お母さん」
と呼びかけると、ふりかえった母のほっぺに、えくぼが見える。
「ろこちゃん!甘く煮えたうずら豆 食べてみる?」
と言って出来上がったばかりのうずら豆を小皿に盛る。
二人でふうふう口から風を吹き込みながら、熱々の豆を食べる。
こっくり煮えた豆の甘さが落ち込んだ心にしみる。
「お母さん」
「なあに?」
「ちょっと呼んでみただけ」
「嫌〜ねえ、親をからかったりして」
嫌な出来事をすっかり忘れてしまう台所。
台所の戸を閉めながら、また母に言う。
「お母さん」
「なあに?」
「あのね、うずら豆も好きだけど、お母さんのことも好きよ!」
(本当は「お母さんが大好き!」と言いたかったのに・・。)
そんな会話を思い出す秋の日。