飛翔

日々の随想です

傘なき人


 昔のことわざに「夜目遠目、傘の内」というのがある。
 女性が美しく見える条件としてのことわざだ。
 電気がなかった江戸時代、ぼんやりと薄暗いあんどんの灯りにかざされる女性は妖しくも美しく見えたのだろう。
 遠くにかすんでみえる女性の姿も蜃気楼に浮かぶ人のようで美しいような幻視をみるのである。
 また傘の内とは、雨ふりで番傘かなんかを七分ほど開いた傘の中にほのかに見える白いうなじや横顔は美しく見えるものです。

 雨の日に傘を持たずに出かけるとこんなふうになる。

   ・名月をかくす雨粒 粋なりや 傘なき恋人(ひと)を帰さぬ今宵