飛翔

日々の随想です

「夜明け前の暗闇が一番暗い」


 
ここ十数数年間、肉親の死を体験し、悲しみにもがいて苦しんできた。特に最愛の母をうしなったことは身を切られる以上につらく慟哭(どうこく)した。
 その時、『夜と霧』を再読した。

夜と霧 新版
ヴィクトール・E・フランクル
みすず書房

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録
V.E.フランクル
みすず書房

「夜と霧」の著書で知られるV・E・フランクルユダヤ人の精神医学者だ。フランクルは妻とともに、今まで持っていた財産全てを没収され、ナチの強制収容所に送られた。
 収容所の中で極限状態にあっても、収容所の窓から差し込む日の光の美しさを仲間と分かち合い、他人に対して、優しい言葉をかけあおうとする人の存在にフランクルは感動。このことは、どんなに過酷な運命がその人に与えられても、人間はその運命に対してどのような態度をとるかという意志の自由が与えられ、人間自身が高貴な存在であることを自らの体験を通して、証明したのだった。
 その結果、フランクルは、「夜と霧」作戦の体験から、実存主義心理学の考え方を見出したのだった。

 この本を読了し、私も母の死の悲しみと痛みと共に生きていこうと思った。
 つまり自分自身を直視することから始めようと思ったのだ。
 こんな言葉がある。
 「夜明け前の暗闇が一番暗い」

底の底までいったなら、もうそれ以上の底はないのだ。底がないという状況はこれから変わる可能性を持っているから、自由である、開放感を得られることを意味する。
 つまり、それが「夜明け前の暗闇が一番暗い」ということである。

 もし、私と同じように苦しんでいる方がいたなら、自身の体験を深め、深淵をのぞき、そこで起きたことに気づき、そしてそれを受け入れていくことが大切なことだと言いたいです。
The darkest hour is always just before the dawn.  
「夜明け前の暗闇が一番暗い」