飛翔

日々の随想です

夏を喫する


  真夏になると、冷蔵庫でキンキンに冷えた水でお抹茶をたてている。茶室がなくとも、茶道具がなくとも、一本の茶せんを買ってくれば、おいしいお抹茶はいただける。
 小さじ一杯半ほどの抹茶を茶碗にいれ、粒がないように平らにならす。次にしずかに冷水を注ぐ。茶せんでまんべんなく混ぜる。細かい泡がたつまで茶せんを動かすと出来上がり。
 冷たい抹茶の味は、さわやかでほの甘い。

 抹茶には和菓子だ。日本の風土には和菓子が合うようにできている。

 
 和菓子は季節を映しているから、その風情を愛でることができる。
 今の季節、あじさい、鮎や、岩清水という銘の和菓子が多い。岩清水に透ける川底の石を映すものだったり、鮎の形のものなど。
 
 よしずの向こうに透けて見える庭の様子やすだれ越しに聞こえる風鈴の音色を聞きながら一服の茶を喫するのは極上の時間だ。
 茶室がなければならないなどと野暮なことは言わないことだ。茶はおいしくいただければ良い。五感を総動員して一服の茶とお菓子をいただく。

 目からは和菓子の季節感あふれる風情を。耳からは風鈴の音色を。茶碗を両手で包むように持ったときの柔らかな陶土の触感。和菓子とお茶がかもし出す絶妙なハーモニーを味覚としてとらえる。
 一椀の茶を共にすする相手がいるならば、その相手との会話を楽しむ。
 茶を喫するというのは、そういう事がもたらす憩いのひと時であろう。
 たまには少し上等の抹茶を40gほど求めて、茶せんを一つ買い涼やかな和菓子と共に茶をたててみてはいかがだろうか。