飛翔

日々の随想です

防衛機制(精神分析)


精神分析は19世紀ウイーンで活躍したジグムント・フロイトによって創始されました。
 人間には自分で自覚出来る意識(顕在意識)と、自分では意識できない無意識(潜在意識)があり、人間のあらゆる心理現象の背後にはこれらの複雑な働きがあるということを発見しました。
 「心の氷山」と呼ばれるように、人間の心は意識が1の割合だとすると無意識は9の割合だとしました。
 無意識は現実や、時間や秩序の影響を受けないとされています。
 その後、フロイトの娘のアンナ・フロイトは父の研究を整理して「自我と防衛機制」をまとめました。
防衛機制」とは、「心の安定をはかるための、自我による種々の無意識的な働き」であると定義しています。つまり、受け入れがたい心的な葛藤に遭遇した時に、その人が思わずとってしまう行動の種類です。
防衛機制

「抑圧」

 ◎自分自身が受け容れられない苦痛な感情や、記憶などを意識から閉め出して、無意識へと押し込むことをいいます。
例:非常につらい体験,心的外傷体験(トラウマ体験)が抑圧の対象となり、思い出そうとしても思い出すのが困難になります。

「同一化・同一視」
 ◎自分にとって重要な他者と自分を同じとみなすこと。他人の優れた能力や行動を、自分のものであるようにみなすこと。
 例:映画や本の主人公と自分を重ねて見る。主人公がピンチになると自分もドキドキする。
例:歌っているアイドルを見て、自分もその歌を歌ってなりきる。好きな芸能人の髪型やファッションを真似る。
例:低学歴にコンプレックスのある親が、子供に高学歴を望み、自分のコンプレックスを解消しようとする。

 「投影」
 ◎自分自身が「抑圧」している思考、感情を、自分でなく相手が持っているように感じること。
 例:ケチな人が、相手に対し「あなたはケチですね」などと言う。
 例:生意気で嫌いだという人には、その人の中に自分の「生意気」な要素を投影しています。その人に会うと嫌いだとおもうのは、その人の中の自分の嫌な部分を投影していて、それを認めたくないので嫌いな感情が起こるのです。

 「反動形成」
 ◎あることを抑圧しているときに、それと正反対の行動をとること。
 例:好きな異性にわざと意地悪をするなど。

 「否認」
 ◎苦痛、脅威となる体験や、不安や不快をもたらす出来事を否定すること。
 例:大切な人を失った時、それを認めたくないため、そばにいるように思い込む。

 「退行」
 ◎以前の発達段階へ戻ることによって、愛情や注目を求めたり欲求を満たそうとすること。
 例:赤ちゃんがえり。

 「抑制」
 ◎不安を感じるような物事について意識的に考えないようにしたり、願っても手に入れることが難しいと思われることについて考えることを避けたりすること。
 例:高層ビルでここで地震が起きたらどうしようとおもうけれど、そんなことないわよねと思い込む。

 「置き換え
 ◎現実にある感情や衝動を感じている対象にに対してでなく、なにか代理になるものにその感情、衝動を向けること。
 例:八つ当たり。

 「合理化」
 ◎何かと理由をつけて自分の正当性を説明しようとしたり、満たされなかった欲求に対して適当な理由をつけて正当化しようとすること。
 例:。イソップ寓話「すっぱい葡萄」が例として有名。狐は木になる葡萄を取ろうとするが、上の葡萄が届かないため、「届かない位置にあるのはすっぱい葡萄」だと口実をつける。

 「知性化」
 ◎欲求、衝動などを直接的に満たしたり、解放したりすることを避け、またこれらを抑圧する代わりに、過度な知的な活動にとって変えたり、コントロールしたりすること。
 例:。専門用語を乱発したり、やたらに難しい言葉を使ったり、言い訳的な言説に終始したりします。一見ものごとを理解しているように見えたりしますが、本質的なことは何も理解していません。
 このブログ、やたらと小難しいことばかり書いていますが、本当は簡単なことを偉そうに書いているだけかも。
 私って「知性化」して偉そうにしているんだわ!きゃ!

 「補償・代償」
 ◎ある劣等感を持っていることに対して、他の事柄で優位にたつことでその劣等感を補おうとすること。
 例:勉強が駄目だから得意なスポーツに打ち込む。

 「昇華」
 ◎非社会的な欲求や衝動を、現実の社会で認められる芸術やスポーツなどの高次の価値を実現すること。
 例:喧嘩ばかりしていた人が、ボクシングで名声を得る。


※「防衛機制」は誰でもがもつ心の安定を図るためのもので、悪いばかりではありません。誰でも日常的に行っていることです。
 しかし、行き過ぎると自由を失い、心を歪めることにもなります。
日常でなにか、心につかえたものがあるとき、この防衛機制が活発に働いているのかもしれません。 。 
 自分がどんな防衛機制をよく使う傾向にあるのかを知って、自分探しをしてみてください。