飛翔

日々の随想です

"kiss & ride


"kiss & ride”という言葉がある。
通勤するダンナさんを奥さんが車で駅まで送迎すること(Kissは行ってらっしゃいとお帰りなさいのチュ!)を言う。
また"kiss & ride”駐車ゾーンができ、いまでは駅の周辺駐車コーナーをそう呼ぶところもある。
健康のため夫は我が家から駅まで早足で20分を歩く。都心へでてから勤務先までの30分をこれまた歩く。一日に平均2万歩以上歩くらしい。
これが雨降りになると私が駅まで送迎つまり"kiss & ride”する。
この言葉を教えてもらったのは我が家によく訪れる酔客からだ。この人はお酒が大好きでお話も大好き。酔った拍子に私の部屋へ迷い込んだ。ちょうどCDでケイト・ブッシュの曲を聴いていた時だった。
このおじさんは「何聴いてるの?」と尋ねたので「嵐が丘」と答えるとおじさんは言った。
「ああ、"Wuthering Heights”ね」と発音も正確に言ったのでびっくり。
"Wuthering Heights”はエミリー・ブロンテの名作である。
この酔客は呑んでばかりでなく読書家でもあった。それも毎日かかさず英語の原書を読むのを日課としていた。単身赴任なので一軒やにひとりさみしくいる。野菜不足だというので時々野菜ばかりのお惣菜を届けるとこの家から妙なるピアノの音色が聞こえてびっくり。単身赴任だとつい夜の巷を徘徊するのではなどと思っていたらこの人は違う。わざわざ自分だけの為にピアノを購入。ピアノを練習する毎日だという。いつか自分のピアノリサイタルをするのが夢だとか。
クラブにのみに行くときもグランドピアノがあるところへ行くのだそうだ。
さて、この人はことほど左様に原書を読み、ピアノを練習し、そしてお酒もたくさん呑む。
私が駅まで送り迎えすることを言うと「kiss & ride」だねと教えてくれたというわけなのである。
我が家にはこうしたいろいろな人がやってきて呑む、呑む、呑む。
いろいろなジャンルの人がやってくるので話題も多種多彩。食べ物の話、建築、旅、文学の話、政治、経済、医療とさまざま。
私はひたすらにこにことお給仕役にまわるのみ。
一度深夜にクラブのママさんとそのご主人が私の夫と共に帰ってきてびっくりしたことがあった。このママさんは知る人ぞ知る。
イギリス留学の経験があって、その時出会った名門の英国紳士と結婚。クラブで出される料理は全てママの手作り。これが最高に美味。気に食わない客がいると「出て行け!」と返してしまう鉄火肌のところもある。
本を出版し、東京や世界中からの賓客も一度はこの店にくるという。そのママさんが時々私のためにおかずをタッパーに詰めてくださる。それが深夜いきなり我が家にやってきてびっくりしゃっくりである。
そんなこんなで我が家はいつもてんやわんやの大騒ぎなのであ〜る。
"kiss & ride”から話が右往左往した。
最後の締めとしてアマチュア無線用語で「さようなら」は何と云うかお教えしよう。
男性諸君には「73」(good-by)
女性には「88」(love & kisses)と言って別れる。
では皆様 73 & 88