飛翔

日々の随想です

クリステイーナ・ロセッテイの詩

翻訳は大切な役割を果たす。
特に詩においてはその語彙、韻律が生死をわけるようなきがする。
さて、入江直祐氏のクリステイーナ・ロセッテイの詩「初めての」>も旧かな。
文語調ですばらしいではないか。


    

初めての

初めての 君を見し 初めての その日をば、
そのときの なれそめの たまゆらを 偲ばなむ。
日の照れる 頃なりし、雲閉ざす 頃なりし、
夏なりし、冬なりし、さだかには 覚ほえず
名残さへ 止めずに おのずから かき消えぬ。
あゝ吾は 目を盲(し)ひて 行く末を知らざりき、
おろかにも 知らざりき、蕾せる わが心
いくたびの 皐月にも またつひに 咲かざりし。
さきの日の それの日を とりいでて 偲ばなむ、
消えゆきし 白雪の 解けさりて 跡もなく
さきの日の さいはひは 吾に来て 去り行きぬ。
さりげなき ことなれど いや深き 思ひかな、
誰(た)ぞ知るーーわが指に ふと触れし 君が手の
初めての 思ひ出を ここにして 偲ばなむ。