今日10月30日は「初恋の日」。
島崎藤村が文芸雑誌『文学界』に『こひぐさ』の一編として初恋の詩を発表したのが、この日。
まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎(りんご)のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅(うすくれない)の秋の実に
人こひ初(そ)めしはじめなり
わがこころなきためいきの
その髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃(さかづき)を
君が情(なさけ)に酌(く)みしかな
林檎畑の樹(こ)の下(した)に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
いつ読んでも流れるようなリズムで、瑞々しく林檎の花のような初々しい淡い恋心が胸にしみる。
“林檎畠の樹の下に おのづからなる細道は 誰が踏みそめしかたみとぞ 問ひたまふこそこいしけれ”
印象的なこの一節は
「リンゴ畑の樹の下にできた細い道は誰が作ったの?って君は尋ねるけれど、二人が会うたびに踏みしめて道ができたことを、わかっていて聞いてくるキミはなんて愛しいんだろう。」
この一節を読むたびに心の片隅にある淡い花がほころんで私の大事な想いの在処を教えてくれる。
というわけで、今日10月30日は「初恋の日」。皆様の心の中にある「初恋」を思い出してあのみずみずしかった日々と初々しい自分に浸ってみてはいかがでしょうか?