自分の人生を振り返るようになるとは想像もしなかった。
天変地異が起きて、たった今まで普通に暮らしていたのに、家族と永遠の別れが待っているなど誰が想像できようか。
そう考えると、たった今を大切にという意味が切実さを帯びてくる。
嘆くことが多かった月日。
もうすべてに諦めがつき、もう誰も、何も期待せず、自分の力で頑張るしかないと腹を決めた。
そうすると、道が開けるものだ。腹をくくると、気持ちが軽くなる。
だんだんと運が味方してくれるようになり、今まで無駄だと思うような努力が報われてくるから不思議だ。
慣れない土地で、貧乏と寂しさだけを友としてきた日々に光をもたらせてくれたののは、地域の子どもたちだった。
寺子屋のような塾をはじめて、月謝は釣ってきた魚だったり、畑のもち米だったり、ぼた餅の差し入れがあったり、ひなびた土地ならではの体験だった。
だんだん評判が評判を呼び、ついに200人近い生徒が集まる塾になったのは25年の月日が経っていた。
趣味のお茶の稽古で知り合った人の依頼で外国人教師を雇って大人の英会話教室も併設した。留学生も送り出すまでになった。
すべてから手を引いたあと、エッセイを書くようになり、それが7年連続で最優秀賞を受賞し、新聞にで、テレビにも出るようになった。
都会から田舎に嫁いで都落ちしたと嘆いた日々も記憶から遠のくようになった今、わが半生を振り返り、運が良かったような気もするし、自分で切り開いた運であったとも思う。
いったい、今まで来た道は何だったのだろうと思う。
昨日まで20歳だったのに・・今は頭に霜を置くようになった。
長かったような短かったような日々を振り返ってみる。
若者は過去等決して振り返ったりはしない。
自分が過去をふりかえるなど、想像もしないことを今している。
歳を取ったのだなあ。。。