飛翔

日々の随想です

認知症二つの療法


認知症の方を介護されているご家族や介護士さんたちは、日々大変なことが多いことでしょう。
 私も舅、姑が認知症になり介護の大変さは身にしみて知っているつもりです。
 今、認知症の方のお話相手として、関わっていて、気がつくことが多いです。
 中でも、環境が変わったり、担当の看護師さん、介護士さんが人事異動で変わっただけでも、大変影響を及ぼします。
 情緒が極端に不安定になることが多いです。住み慣れた施設や部屋や家を移転したとなると環境の変化が大きいので、その影響も多大なものになります。
 認知症患者さんの対処の仕方として一番悪い例は、否定することです。そして叱責したりお説教したりすると、自分を否定されたと思い、被害妄想がはじまります。そしてそれがきっかけで「物盗られモード」になり、叱責した人が自分のものを盗ったと攻撃することが始まる場合もあります。

 *否定しないこと。
 *叱らないこと。
 
 日ごろ、介護でついつい、声を荒げたり、怒ったりしてしまいます。でも、すぐに安心させてあげてください。
 言葉として「好きだということ」「心配していること」などを伝えてあげてください。
 患者さんは常に不安がっていることを念頭に静かで落ち着いた声で受け止めてあげてください。
※参考までに次の二つ療法を記しておきます。
 
バリデーションという認知症の方たちとのコミュニケーション術のレクチャーとワークを受けてきました。バリデーション療法は、アメリカのソーシャルワーカー:ナオミ・フェイル(72)さんが開発した、認知症の方たちとのコミュニケーション術のひとつです。
 
 バリデーションは元々、「確認する、強くする、認める」の意味に用いられますが、フェイルさんによると、認知症の人の「経験や感情を認め、共感し、力づける」意味でバリデーションという言葉を用いているそうです。
 バリデーション療法の特徴は、騒いだり、徘徊したりすることにも「意味がある」として捉え、なぜ騒ぐのか、なぜ徘徊するのかを患者の歩んできた人生に照らして考えたり、共に行動したりするというもので、「共感して接すること」に重点を置いた療法です。
 共感することで、高齢者の自尊心の回復や不安の軽減を図るとともに、介護者自身も前向きに気持ちを持てるというものです.

※フランス生まれの認知症ケア「ユマニチュード」:
 
「ユマニチュード」は、
*見つめること(同じ目の高さで、正面から、近くから長く)
*触れる事
*話しかける事(頻繁に、優しく、前向きな言葉で)
*立つこと(立つ様に支援すること)
を基本とした人間の存在(尊厳)を主眼とした看護の手法の集大成が「ユマニチュード」。


【ケアの事例1】同じ目の高さで、正面から、相手の顔から20センチくらいの距離で、長い時間をかけて、みつめます。上から見下ろすと、強い立場にあることを感じさせてしまうので、あくまでも同じ目の高
 認知症の人は視野が狭いので、正面から。近くで時間をかけてみつめるのは、親近感を示すためです。

【ケアの事例2】話しかけ方のポイントは、頻繁に、優しく、前向きな言葉で。ケアを始める時には、これから何をするか丁寧に説明し、楽しく心地よく感じてもらえるよう、声は優しく。ケアを終えた後もそれがどうよかったか、話しをします。

※ユマニチュードには4つの柱がありますが、家庭でもできる3つを紹介しましょう。

 ●最も大切なのは「見る」こと。相手を威圧する見下ろす視線や、斜めや横からの視線は避け、同じ目の高さで話す。対等な関係を伝えるためだ。認知症の人は視野が狭いため、近づくときは正面から近づき、鼻先20センチくらいの距離から見る。チラッとではなく、「0.4秒以上」見る。

 ●話すときは前向きな言葉を選ぶ。医療機関では「おはようございます。点滴です」より、「おはようございます。良い天気ですね」と話を始めることが推奨される。会話を楽しんでいる雰囲気を伝えるためだ。相手の反応がなくても黙りこまない。2人で体を拭くときは、一人が患者の体を支えて前から向き合い、視線をとらえて話す役になり、もう一人が体を拭く役になる。

 ●立てる人には、歯磨きや清拭の際に立ってもらう。筋力保持のためだけでなく、立つことで視界が開け、より多くの情報が届くという。