飛翔

日々の随想です

仮面の女


家にいるときはノーメイクでいるのはもちろんだけれど、お使いに行くとか、ちょっとお散歩というときは、軽く顔にパフをはたいて、目鼻を整えるぐらいのことはする。服装も普段着ではあるけれど、人前に出ても良い程度のものは着て出かける。
 今日は夫が本屋へ行こうというのでお供することにした。そのままでいいよというので、ノーメイクに、アッパッパの服装。おまけに外出にも、洋服にもふさわしくない桐の下駄をつかっけて出てしまった。そして、レジを出るあたりで、夫の親友にばったりあった。
 私は初対面。実はいつか紹介してもらいたいと思っていた人だったのに、よりによって、私が一番「バッチイ」格好で、バッチイ顔で、バッチイ服を着ている時に紹介されたのだから、狼狽してしまった。
 その道の権威であるその人は風格があり、素敵な風貌。
 夫が私を前に押し出して紹介した。
 「わざわざアメリカで勉強したんだって?」とその人は私に尋ねた。
 「あの、その、え〜、去年・・・」と借りてきた猫のようになってしまった私。
 「ゲシュタルト療法と箱庭療法をちょっと」と私。
 「あ、そう」
 とその人はあっさり言って、沈黙。
 あとは夫とよもやま話がはじまり、やがてそれぞれの車に乗って別れた。
 いつか会いたいと思っていた人と、最悪の状態で会ってしまった私はしょんぼり。
 教訓:外出時には仮面をかぶっていこう。