飛翔

日々の随想です

映画「ヘルプ」を観て


今日は久しぶりに映画を観た。
 「the Help](心がつなぐストーリー)
 「ヘルプ」とは、通いのメイドの事。
 かつてのアメリカ南部で、白人家庭に通う黒人メイドたちを指した言葉だ。
 黒人に自由のない時代、さまざまな苦しみを抱えて生きる彼女たちこそ、声にできない自由の叫びを聞いてくれる、誰かのヘルプ(help)助けを必要としていたのだ。
 原作は、ニューヨークタイムズ紙の書籍ランキング103週連続でランクインした、キャスリン・ストケットの処女小説である

「あらすじ」
 1960年代前半。大学を卒業したユージニア(愛称スキーター)はライターを志し、故郷のミシシッピ州ジャクソンに戻った。故郷の友人たちは皆、結婚、出産をしており、家事や育児を黒人メイドたちに任せきった気楽な生活を送っている。友人の一人ヒリーは、病気がうつると信じ込んでメイドのトイレを屋外に作るべきだと主張する。スキーターは友人たちの黒人メイドに対する態度に嫌悪感を覚える。また、自らも黒人メイド、コンスタンティンに育てられたスキーターは、大好きなコンスタンティンが退職し何も告げずにシカゴへ去っていることに疑念を抱くが、母は取り合わない。
スキーターは、ローカル新聞の家庭欄で家事の相談に代役で回答することになり、友人エリザベスのメイド、エイブリーンに手伝ってもらうことにする。エイブリーンは優秀だった一人息子を不幸な事故で亡くして以来、子守り相手の子供以外には心を開かない。一人のライターとして黒人メイドたちの真実を著す責任を感じたスキーターは、エイブリーンを熱心に説得、密かに取材を始めるが、その他のメイドたちは報復を恐れて固く口を閉ざしてしまう。
そんな折、ヒリーのメイド、ミニーは、ヒリーの家のトイレを使ったことで解雇される。怒ったミニーがスキーターの取材に参加することになった。また、ヒリーが雇った新しいメイド、ユール・メイが拾った指輪を質に入れて逮捕されたことに憤慨したメイドたちもまた、自らの経験を語り始めた…。
 主演はエマ・ストーンビオラデイビス。監督は「ウィンターズ・ボーン」などにも出演している俳優のテイト・テイラー。第84回アカデミー賞でオクタビア・スペンサーが助演女優賞を受賞した。
驚いたのは、「ジム・クロウ法」と呼ばれる法律の存在である。奴隷制度廃止後からケネディが暗殺された20世紀半ばまで、存在したアメリカ合衆国南部の州法である。奴隷解放後も黒人を差別する法律が継続していたという事実に驚いた。
 キング牧師が暗殺された背後にはこんな州法が南部にまだ、存在し、白人社会には当たり前のように黒人を差別していたのである。
 映画としてはヒューマンタッチでいかに黒人が差別されていたか。一般家庭において、ヘルプと呼ばれている通いの黒人メイドはトイレさえ家の外の黒人専用トイレでないと使えなかったことなど、不当な人間扱いされていなかったアメリカ社会の黒人差別に焦点が置かれた秀作であった。
 他の黒人差別を扱った作品よりも、ひりひりした感じがなく、ユーモラスな部分もいれてヒューマンタッチに仕上げられている。
 この映画は黒人差別に焦点があてられているが、黒人だけでなく、性差別、ほか、さまざまな差別の中を生きていることを思う。その差別には、みんなで立ち向かわなければならない。一人一人の心の中にある「差別」をなくすことである。
面白かっただけでなく、考える余韻を与えてくれた映画であった。
※映画の中でスキーターのメイド役、シシリー・タイソンは1933年生まれ。黒人女優のパイオニアであり、黒人で初めて準主役を務めた女優である。私生活ではあのマイルス・デイヴィスと結婚していたことでも知られている。人権・教育・人種問題でも活動。
 (私は知らなかったので、ちょっと驚き、ちょっと嬉しかった)